2017年10月12日 第41号

カナダにおける日本研究の推進

 平成29年度外務大臣表彰を受賞したブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)アジア研究学科のジョシュア・モストウ教授の表彰伝達式が10月4日、在バンクーバー日本国総領事公邸で開かれた。モストウ氏はカナダにおける日本研究の推進に貢献したことが称えられ、今回の受賞に至った。

 

家族と。中央がロサンゼルスから駆けつけた母親のグローリアさん

 

 岡井朝子在バンクーバー日本国総領事より表彰状を受け取ったモストウ氏はUBC関係者、学術関係者、家族、友人など約40名に囲まれ、和やかに受賞を祝った。

 

百人一首の研究など

 外務大臣表彰は、国際関係のさまざまな分野において多くの人が活躍し、日本と諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をしている中で、特に顕著な功績のあった個人および団体について、その功績を称えるもの。今年度表彰したのは187個人、45団体で、そのうち海外在住受賞者は160個人、36団体。カナダでは、ほかに水田治司氏(バンクーバー日本語学校並びに日系人会館理事)と、新照子氏(裏千家淡交会トロント協会幹事)が受賞した。

 冒頭で岡井朝子総領事がモストウ教授の経歴を紹介した。それによるとモストウ教授は1960年代、カリフォルニアで日本への興味を持ち始め、高校時代に日本語を学び、大学時代は国際キリスト教大学に留学した。古典文学と日本美術史の研究を続け、国内外での客員教授、『百人一首』ほかの著書、研究発表やシンポジウムに積極的に参加してきた。

 「長年にわたる日本文学の研究と日本文化への理解推進における功績に対して贈られたものです」と、岡井総領事より表彰状が渡された。

 

家族や同僚に囲まれて

 「まさかアメリカから母や姉がこの表彰式に来てくれるとは思いませんでした」と喜びを語ったモストウ教授は、母や姉、また中学の歴史の先生ナンシー・フーバーさんを紹介した。

 「UBCには約30年お世話になっています。当初、国際交流基金の援助のもとに5人で日本研究プロジェクトを始め、シンポジアムや論文発表を行ってきました。ですから、この受賞は仲間とともにいただいたようなものです。最近では諸々の理由でUBCの(アジア学科以外で)日本研究家が減ってきていますが、岡井総領事にもご協力いただき今後も日本研究を盛りたてていきたいと思っています」とスピーチした。

 続いてクリスティーナ・ラフィンUBC准教授がモストウ教授の出版物や研究発表について紹介し、祝辞に続き乾杯の音頭を取った。

 元恩師のナンシー・フーバーさんは28歳のときに12歳のモストウ少年を教えた。「何に対しても興味を持つ積極的な生徒でした。手紙やメールでずっと近況を知らせてくれました。この席に出席できてとても光栄です」と語った。前近代日本文学を専攻するUBC博士課程の鈴木紗江子さんは「先生の授業では空気がひきしまり、真摯に勉強しなければと感じます」と語った。

 家族や同僚、教え子、友人らに囲まれて和やかな歓談が続いた。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

Joshua S. Mostow, PhD.(ジョシュア・モストウ博士)
ブリティッシュ・コロンビア大学アジア研究学科教授アメリカ・ペンシルベニア大学大学院において博士号取得。専門は日本古典文学・日本美術史。著書に『Pictures of the Heart: The Hyakunin isshu in Word and Image』(University of Hawaii Press、1996)、論文に『日本美術における王朝の「みやび」』(東京国立文化財研究所編)、『語る現在、語られる過去 日本の美術史学100年』平凡社、1999)、『伊勢物語- 創造と変容』山本登朗・ジョシュア・モストウ編(和泉書院、2009)などがある。『A Third Gender: Beautiful Youth in Japanese Prints. Asato Ikedaとの共著(ロイヤル・オンタリオ・ミュージアム出版)ほか。パートナーのシャロリン・オルバーさんもUBC教授(近代現代日本文学)合気柔術(大東流)4段

 

UBCの同僚と(左端がパートナーのシャロリン・オルバーさん)

 

平成29年度外務大臣表彰を受賞したジョシュア・モストウ教授と岡井朝子総領事

 

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