2017年10月5日 第40号

庄司蛍乃佳さん15歳。「夢はプロのハープ演奏者になり、弟をサポートしていくこと」。

11月にメキシコで開催されるハープの世界大会に出場する蛍乃佳さんの旅費の支援をしようと、9月30日、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市のスティーブストン仏教会でチャリティー・コンサートが開かれ、約130人が熱いエールを送った。

 

ソロ演奏した庄司蛍乃佳さん。http://honokaharp.com

 

ハープで芽生えた夢と希望

 当時9歳だった蛍乃佳さんには3つ年下の自閉症の弟がおり、蛍乃佳さんが日頃我慢することが多かった。弟のセラピストから「蛍乃佳ちゃんとお母さんが一緒に取り組めるものを見つけてみては?」とアドバイスされ蛍乃佳さんに尋ねたところ、答えは「ハープをやってみたい」だった。

 先生を探し、初めて触ったハープ。ところが初心者とは思えないほどの音色が小さな指から弾きだされ、その日から母と娘のハープをめぐる生活が始まった。

 みるみるうちに上達し、現在ではレッスンのために週4回バンクーバーに通う母娘。キワニス音楽祭ではハープ部門で3年連続優勝、2017年には総合楽器部門でも優勝。11月にはメキシコで開催されるハープ世界大会への出場資格を手にした。

 将来はアメリカかヨーロッパの音楽大学で勉強し、プロの演奏家になりたい。自閉症児を持つ家族のために、音楽療法士になる勉強もしたいという。

心を込めた演奏

 同仏教会の生田真見開教使の司会進行で、真紅のドレスに身を包んだ蛍乃佳さんが演奏を始めた。結婚式などでよく聴く『カノン二長調』が始まると、場内がリラックスしたムードに。後半では小さなサウルハープで映画『千と千尋の神隠し』の主題歌『いつも何度でも』を。『禁じられた遊び』『さくら』など全14曲を感性豊かに演奏した。

 温かな拍手に包まれてのアンコールは『オズの魔法使い』でおなじみの『虹の彼方に』。まるで映画から飛び出したようなギンガムチェックのドレスが可憐だった。

みんなに支えられて

 主催は仏教会の『日本語プレイグループ宝島』。「以前にもチャリティー・コンサートを提案しましたが、お母さんの千佳さんが“どこの家庭も大変なのだから”と遠慮されました。でも今回は世界大会への出場が決まったためお願いしました」と須賀孝子さん。

 「蛍乃佳ちゃんのことを知っていただく良い機会になりました」と話す発起人の大西令子さんは、娘さんやボランティアと一緒に受付けや茶菓・食事の用意をした。

 入り口には蛍乃佳さんとハープの歩みを示す写真が掲示され、寄付だけ届ける人もおり、多くの人の応援に満ち溢れていた。

 「蛍乃佳ちゃんは、小さなころから日曜学校に通っていましたし、会堂で何度も演奏してくれました。現在の成長ぶりを誇りに思っています」と生田開教使。

 終演後、同仏教会一同、婦人部、日曜学校からそれぞれ支援金を渡され花束を受け取った蛍乃佳さんは、大勢の人たちに感謝の言葉を述べた。そこには演奏を終えた安堵感に包まれた15歳の笑顔が輝いていた。

(取材 ルイーズ 阿久沢)

 

スティーブストン仏教会でのチャリティー・コンサート。左は司会進行役を務めた生田真見開教使

 

庄司蛍乃佳さんとハープの先生、大竹美弥さん(右)

 

受付けの皆さんと母親の庄司千佳さん(左から3人め)

 

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