2017年10月5日 第40号
バンクーバー酒フェストが9月28日、バンクーバー市で開催された。今年が2回目。主催はBC日本酒協会(SABC)。イベントは、午後にはレストランや取扱い業者を対象に開かれ約200人が集まり、夕方からは一般の日本酒ファンに各酒造自慢の日本酒が披露された。参加した酒造は33社。多くは日本からだが、バンクーバーからも出店。日加酒造メーカーの酒造りへの思いとこだわりが詰まった極上の日本酒に、この夜、訪れたファンは酔いしれた。
オープニング前の会場の様子。27ブースに33社、約120銘柄が並ぶ。最近ではプレミアム酒が好まれる傾向にあるとエリス会長は語っている
可能性が高いバンクーバーでの日本酒市場
今年が第2回となった酒フェスト。これだけの日本酒を一度に味わえるイベントはバンクーバーには他にない。SABC会長パトリック・エリスさんは、おそらく120銘柄くらいは出品されているだろうと語った。
しかも酒造メーカーの代表が日本から参加し、各銘柄の説明をしてくれる。ファンにとってはたまらないイベントだ。
きっかけは「一カ所に多くの日本酒を揃えた方がより興味を惹きつけるとおもったから」。そして堅苦しくならないように演出にもこだわった。気軽に楽しんでもらうためにバンクーバーでは高級ブランドのイベントなどに使用される会場インペリアルで開催。音楽を流し、和太鼓の演奏を交えながら、「パーティーの雰囲気で、電気をちょっと暗くして、音楽で盛り上げて、お酒エンジョイしましょうっていう感じで」。
そうすることで会場でも来場者は気軽に酒造メーカーの人に声を掛けられるし、日本酒への印象に堅苦しさもなくなる。まずは日本酒を楽しんでもらうことだ。
バンクーバーへの日本酒輸出のパイオニア的存在、吉乃川酒造の代表取締役社長峰政祐己さんは、バンクーバーファンの日本酒に対する柔軟さを感じている。「吟醸にしろ、純米にしろ、なにと一緒に食べたらいいんですかってすごい聞かれるんです」。日本だと、『大吟醸じゃなきゃ』のような固定概念が最近は強いという。その点バンクーバーでは、「自分が料理を楽しむのにどういうお酒を選べばいいんですか、みたいな。その辺はもともとワインを楽しむ文化が成熟しているから、お酒も選び方も成熟していますね」。
バンクーバーへの輸出を始めて約10年になる利守酒造の専務取締役利守弘充さんも、日本酒に対する固定概念がないので、「とりあえずトライするという人が多い。そういう意味では、可能性があって楽しいです」と語った。
バンクーバーでの日本酒の可能性はまだまだ高そうだ。
日本酒の楽しみ方の幅を広げて
峰政さんは「皆さんの日本酒への理解が深まってきてるなって気はします」と語った。「酒の中のレパートリーというか、引き出しの幅が広がったとそういう感じはしていますね」。
利守さんも「趣向は広がってきましたよね」と、ほぼ同様の感覚だ。あとはいろいろな飲み方を楽しんでほしいという。冷酒、常温、ヌル燗、熱燗というふうに「その季節に合わせたり、食べ物に合わせたり、いろんな飲み方を楽しんでほしいです」。
日本酒造りはどの酒造もこだわりを持っている。利守酒造は幻の酒米「雄町米」を復活させて造った自慢の酒を持ってきた。バンクーバーのファンには楽しく飲んでほしい。フードとの相性では肉でも魚でもハーブなどで味付けした「素材を生かした料理に合うと思います」と利守さん。主役にも脇役にもなる逸品だ。
吉乃川は5銘柄を用意。2銘柄はカナダでしか販売されていない。「カナダが早かったから、それでカナダの人向けに」と峰政さん。飲みやすい日本のタイプより「少しパンチを効かせたような酒を出しています」と、カナダが長いだけにその好みを把握している。
それぞれの特長や取り組み方は違っても、バンクーバーで日本酒をおいしく楽しんでもらいたいという思いは同じ。エリス会長は、どんどん日本酒の銘柄がバンクーバーで増えて、いつでもどこでも楽しんでもらえるようになればと思っていると語る。次はフードとの組み合わせとか、少しずつ日本酒の魅力を引き出したものにしていきたいと語った。
(取材 三島直美)
BC日本酒協会(SABC)
日本酒の普及活動をするブリティッシュ・コロンビア州の団体。本部はバンクーバー。現在は、酒造もしくは販売流通を手掛ける12社が参加。酒フェスタや日本酒普及のためのイベント参加などの活動を行っている。
www.sakebc.ca
SABCエリス会長(左)と吉乃川酒造峰政社長。吉乃川がバンクーバーに進出する時からの長い付き合いでバンクーバーでの日本酒の普及に貢献している