2017年10月5日 第40号
9月29日、バンクーバー市ダウンタウンのコースト・コール・ハーバー・ホテル・バイ・アパで、腹話術師のいっこく堂さんと、マジシャンの緒川集人さんによる公演があった。これはアメリカ各都市を回るUSツアーの一環で、初めてのバンクーバー公演となる。世界的にも活躍する2人の素晴らしいショーは会場を埋め尽くした観客を魅了した。
終演後撮影に応じてくれたいっこく堂さん(右)と緒川集人さん
感嘆と驚きの連続のショー
最初に登場した緒川集人さんは、ハンカチやワンド、トランプなどを使って、鮮やかなマジックをリズミカルに披露した。手にしたものが目にもとまらぬ速さで消え、違うところから現れたり、その巧みな手さばきは芸術的。オーソドックスなものからオリジナリティーに溢れたものまで、バラエティに富んだ内容が楽しめた。絵に描かれているリンゴやペンが出てきたり、どこから出てくるのかペンがどんどん増えていったりと、不思議なトリックの数々に観客の視線は釘づけになった。スクリーンに手元を映して見せるはずだったクロースマジックは、スクリーンの設置具合が悪く、見ることができなかったのが残念。
いっこく堂さんは鳥のサトルとジョージという名前の人形を持って登場。3役それぞれ違う声を1人で、しかもそのうちの2役は口を動かさずに声を出して演じている。よくこんがらないものだと感心。師匠という名前の人形とは「ラ・バンバ」を歌い、観客席を歩いて回った。多彩な物まねのレパートリーから今回は、松山千春や桑田佳祐、ピコ太郎などを、もちろん腹話術で歌って会場は大盛り上がり。他にも、口をあまり動かしていないのに、たくさん話しているという「口数の少ない人」や、口の動きと実際の発声がずれる衛星放送など、観客からは笑い声と感嘆の声が出っぱなしの出し物が満載だった。
観客のコメント
「(いっこく堂さんは)しゃべっているのに、近くで見ても全然口を動かしてないのがすごかったです」(レイナちゃん10歳)。他にも「マジックも腹話術も楽しかったです。ピコ太郎(の人形)がこっちに迫ってくるのが面白かったです!」。「(いっこく堂さんは)テレビで見たりしてすごいなと思ってたんですけど、生で見れてうれしかったです」と、みなさん興奮気味。いっこく堂さんとステージに上がり、一緒に歌った(実際に歌ったのはいっこく堂さんの腹話術)マークさんは「今までに見た腹話術師の中でも一番素晴らしいですね。選ばれたのはビックリしましたけど楽しかったです」と語った。
終演後のインタビュー
初めてバンクーバーを訪れたといういっこく堂さんに公演の感想を聞くと、「楽しかったです。集人さんがまず盛り上げてくれたからやりやすかったです。皆さんの反応はすごく良くて、ありがとう!という感じでした」。英語もとてもお上手ですと言うと「インチキ英語ですけどね(笑)」と謙遜。そして、「またバンクーバー公演ができたらいいですね」とのことだが、来年はどうですかとの問いには「それはちょっと早いですかね。ネタが…。日本語でいいんだったらできますけどね(笑)」。ぜひ日本語での公演も見てみたいものだ。
バンクーバーには数年前に訪れ、コンファレンスで講演をしたという緒川集人さん。マジックを披露しながらのトークも楽しいですねと言うと「しゃべってばっかりです」と笑う。「日本の方も思いのほか多くて、途中から日本語の比率が多くなったんですけど。すごくフレンドリーなお客さんが多いですね。カナダという国自体がフレンドリーだと思っているので好きですね」。クロースマジックが見られず残念と言うと、「いろんなところでやってきてますから、トラブルはよくあります。とにかくお客さんが最後満足してくれればいいので。結果が大切なんで。それを目指すのであれば、どんなことでもするというか(笑)」。
公演を見て話を聞いてみると、2人とも努力と研究を重ねて技術を磨いているのだと感じさせる。だからこそ見る人を感動させるショーを作り出せるのだろうと思った。(取材 大島多紀子 / 写真 中村みゆき)
柔らかな語り口のいっこく堂さん。傍らの人形は「師匠」
とても話しやすい雰囲気の緒川集人さん