2017年8月3日 第31号

7月28日夜、青空と青い海をバックに鮮やかな衣装の女性たちがフラを舞い、バンクーバーのキツラノショーボートを訪れた観客約500人はうっとりと酔いしれた。

 

美しい自然の中で、フラの生命感がいっそう引き立つ(写真提供 Manto Artworks中村"Manto"真人さん)

 

本番前1カ月、週4日の集中練習

 本番を2週後に控えた7月16日朝6時半キツラノショーボート。「今日は寒いわね」メンバーが口々に朝の挨拶を交わす。日頃は異なるところで練習する5つのチーム、52人が合同の通し稽古に集まった。早朝の野外練習にもかかわらず、その舞姿には優雅な笑みが浮かび、指先と視線はどこまでもやわらかく繊細だ。その姿と対照的に、真剣なまなざしでステージを見つめる人物がいた。ワイレレワイワイリーダーのヨシさんこと山本芳照さんである。

 7月中、メンバーは週4日の練習に出席、それがステージ参加の必須条件。指導・統括するヨシさんに至ってはそれが毎日となる。

 

フラとヨシさんの魅力に引き込まれて

 普段のレッスンで、ヨシさんはメンバーに向けて「ほら、昔、彼とパームツリーの下でイチャイチャしたことを思い出して、愛を込めて〜」と屈託のない笑顔とジョークで明るく指導。「こうして楽しく活動できるのはヨシさんのご人徳」とメンバーたちが口を揃える。

 「ココナツブラとわらを着けて踊るイメージ」を持っていたヨシさんがフラに目覚めたのは、本場ハワイで力強さと優美さを持ったフラを観た時のこと。その後、ハワイで師(クム)に付き、心と身体でフラを会得した。バンクーバーに移住後、友人のランメル幸さんに勧められ、幸さんの自宅で2006年にレッスンを開始。その時わずかに3名。そこから11年で約70人の大所帯に発展した。メンバーは語る。「みんなでワイワイやれるのが楽しい」「ヨシさんはステップを超えたアロハの心を教えてくれる」活動にはそうした日々の魅力に、「巡業」と呼ぶ、シニアホームなどへの慰問公演での交流の感動がある。そして今やコミュニティの夏の風物詩となったキツラノ公演は、継続の大きな原動力だ。

 

特別ステージ90分 日本からの姉妹グループも出演

 晴天に恵まれたキツラノショーボート本番。ハワイ語の曲を中心とした21の演目の中に、ひょうたん製の楽器イプヘケを演奏しての古典曲カヒコ、英語曲、『花は咲く』も登場。中盤では観客を招き、老若男女50人以上がステージに上がり、指導に合わせてステップや舞いにチャレンジした。皆の喜ぶ姿が会をさらに盛り上げ、最後は客席と一体になり、恒例のオリジナルソング『アロハマハロ』の大合唱で幕を閉じた。

 終始ステージからあふれていたのは笑顔と愛とやさしさ、そして時々ユーモアとたくましさも。ステージを終えたメンバーの一人が「年々幸せが増していく」と語った。そして、幸せは伝染することを観客の満ち足りた笑顔が語っていた。

(取材 平野 香利 / 写真 平野 直樹)

 

チーム同士が切磋琢磨し、充実したフラの祭典に育った

 

ヨシさんがフラと出会うきっかけを作った滝口潤子さんの日本チームも参加

 

フラの活動に奉仕するヨシさん(左)と創始メンバーの幸さん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。