2017年4月20日 第16号
津軽三味線奏者の山口ひろしさんとパーカッショニストの石川智さんが、バンクーバー在住のギタリストの中島有二郎さんと共に「Kizuna」というバンド名で、バンクーバーなど3カ所でコンサートを開催した。
4月8日と9日のSakura Days Japan Fair(バンクーバー市バンデューセン植物園)では2日間で3ステージに出演。8日の1回目のステージでは、雨のため山口さんは三味線を出すことができずボーカルとして参加した。山口さんは「4歳で初舞台を踏んで長くやってますが、歌での出演は初めてですね。大雨の中、歌で出演とは『人生いろいろあるな』と勉強になりました」と笑って話した。同日2回目のステージでは、意を決して三味線で演奏に参加。実は山口さんは袴姿でステージに立つことになっていたのだが、この日は雨のせいでそれもままならず。9日は天気も回復して、やっと通常のステージが展開できた。
コテージビストロでの公演
その前日7日には、リッチモンド市のスティーブストン仏教会でコンサートを開いた。
山口:「ありがたいことに大盛況でした。今回、音響スタッフさんに日本から来ていただいたので、素晴らしい音響でできましたし、(会場の)雰囲気も良かったです。お客さんの反響も、とても良くて、とても盛り上がりました」
石川:「昨日のコンサートはすごく温かく、お客さんの反応がとても良かったです。素直に出してくれる感じで。お客さんが盛り上がっていくので僕らも盛り上がっていくという感じでした」
バンクーバーに来るのは4回目だという山口さんは、以前、日系祭りや総領事館主催のコンサートなどに出演している。1年半ぶりに訪れて懐かしい人たちに会えたそうだ。一方、石川さんは初めて訪れたバンクーバーの印象について「寒いですね。また暖かい時期に来たいです」。山口さんも「桜が咲いているというので暖かいだろうと思ってたんですけど、寒かったですね」と同意。確かに今年はなかなか暖かくならず、桜の開花も遅れ気味だった。
3人での共演について聞いた。
中島:「この3人では、すでに日本で何回かやってるんです。石川さんとは日本で1カ月くらい一緒にいろんな所を回って演奏しました。2人との共演は一緒に作り上げていく感じで楽しいですね。この3人はすごく気ごころが知れてるから、音楽的にもやりやすい。ステージも本人たちが一番楽しんでるかもしれない」
ブラジリアンギタリストとしてカナダや日本で活躍する中島さん。日系のイベントにも多数出演している。パーカッションの石川さんはクラシック、ロック、ジャズ、ラテン、ミュージカルのサポートなど、いろいろなジャンルで活躍する他、ライブ活動も数多くこなしている。そして、4歳から津軽三味線を始めて、これまでに日本だけでなく海外での演奏経験も多数ある山口さん。この3人が織りなす、日本の民謡とラテン音楽がミックスするステージは即興的なところもあり、そこが面白いという。
山口:「今日(8日)演奏したのも民謡ですが、ステージではラテンミュージックと融合して途中サンバみたいになってきたりして。即興的なところがあって読めないんですよ。津軽三味線の大きな特徴の一つとして即興演奏というのがあるんですが、(それと同じように)セッションして、そのたび、ちょっとずつ違ってくるんです」
9日はバンクーバー市にあるコテージビストロでコンサートを開催、広いとはいえない会場に約100人が詰めかけ、演奏前から楽しい雰囲気に満ちあふれていた。コンサートは中島さんと石川さん2人でのブラジル音楽からスタート。中島さんの繊細な柔らかいギターの音色が耳に心地よく響き、さまざまな打楽器を駆使して多彩なリズムを刻む石川さんとの息の合った演奏に聞きほれる。続いて、山口さんの津軽三味線のソロ。圧倒的な力強さで観客をひきつけた。最後は3人による日本の民謡やブラジル音楽の演奏。観客の一人が歌で飛び入り参加するという楽しい場面もあった。演奏する側と観客の距離が近いライブハウスならではの一体感のあるステージを、誰もが楽しんでいた。
(取材 大島 多紀子)
石川智さん、山口ひろしさん、中島有二郎さん(左から)