2017年4月13日 第15号
4 月5 日、岡井朝子総領事主催の下、在バンクーバー日本国総領事館において安全対策連絡協議会が開催され、日系企業、日系団体等の関係者16 人が出席し、地震や津波などの災害に対する心構えや対策についての説明を受けた。安全対策連絡協議会とは、在留邦人や短期滞在者の安全を守るため、危機管理を担当する関係者との間で情報提供と意見交換の場として行われているもの。今後、総領事館はセミナーやシンポジウムを開催し、より幅広い参加者に情報提供していく方針だ。
協議会のあと、バンクーバーの指定避難場所の1つを視察。このような黄色いマークが付けられている。ここにはある程度の食料や医薬品の備蓄もある
災害に備えることの大切さ
バンクーバー周辺で今後50 年間にマグニチュード9 級の地震が発生する確率は30%といわれている。以前に大地震を経験したのが300 年以上前ということもあって、ブリティッシュ・コロンビア州に住む人々の危機感が足りないというのが現状だ。バンクーバー直下型の大地震が起きた場合、1 万5 千人の死者が出て、被害総額は1,275 億ドル(10 兆5 千億円)にも上るという試算も出ている(注:調査機関によって数字は異なる)ので、軽視できない案件だといえる。
当地で緊急事態が発生した場合、総領事館では緊急対策本部を立ち上げ、現場の対応や情報収集、邦人の安否確認、情報の発信などにあたる。直下型大地震など被害が甚大な場合は、外務本省および他国の在外公館から危機管理専門家などが参集するが、空港が被害に遭ったり、主要道路や橋が崩壊するなど、状況によってはスムーズに対応に当たることができなくなる可能性もある。BC 州には約3 万5 千人の在留邦人が滞在しており(うち6 割は永住者)、観光客など短期滞在者は年間15 万2 千人となっている。このような大人数の安否確認を総領事館だけで行うことは容易ではない。そこで、日系団体や企業が、日頃より連絡網を整備して緊急時に活用できれば、邦人の安否確認の助けとなるだろう。緊急時には現状把握を行い、司令塔となるような人たちが適切で迅速な指示を出し、他の機関と情報を共有できるようなシステムを構築することも重要だ。また、大災害に遭った際、救援物資がすぐに届かないことも多いので、自分の身は自分で守るという意識を持つことは大切だといえる。各団体や企業には、所属する人たちに危機管理の重要性を伝え、各自で災害への備えをすることを奨励する役割も期待される。
災害時における各市の対応
BC 州では、こうした緊急時の際、まず各市レベルで対応することになっている。今回はバンクーバー市、リッチモンド市、バーナビー市の取り組みが紹介された。各市ともウェブサイトで自然災害の際の対応や備えについて説明している。バンクーバー市では、地震が発生した際の津波や地面の液状化の危険性が高い地域を記すハザードマップ作りや、崩壊の可能性が高いぜい弱なビルの調査などに取り組み始めている。また、バンクーバー市には25 カ所の指定避難場所があるが、他2 市については災害発生後に避難場所を通知するとしてある。各市によって災害時の対処が違うので、住んでいる市や職場がある市での対応についてウェブサイトなどで確認しておきたい。災害時には電話が通じないことも起きるが、フェイスブックやツイッターで連絡を取ったり、動画サイトで情報収集ができることもある。各市とも、こうしたインターネットでの通知や情報発信を整備している。
在留届と「たびレジ」
カナダに3 カ月以上滞在する邦人には、旅券法によって在留届の提出義務がある。この在留届をもとに総領事館では、安全情報等を伝達する一斉同時メールを在留邦人に送信している。在留届を出すことに抵抗感を示す人もいるが、緊急時には総領事館が安否の確認をする情報元ともなっているので、自分の身を守るためにも届けを出すことは大切だ。また、短期滞在者対象の「たびレジ」についても説明された。これに登録すると、緊急時の情報や緊急事態が発生した際に連絡を受けることができる。カナダに住んでいても海外に旅行や出張の際には、登録しておくと安心だ。日本人海外旅行者は年間1700 万人だが、「たびレジ」登録者数は160 万人に留まっているという。そうしたこともあり、日本の外務省は「海外安全ホームページ」で漫画「ゴルゴ13」を使って、国民一人一人の安全対策意識と対応能力の向上を図る取り組みを開始した。「海外安全ホームページ」には海外在住者にとっても有用な情報が掲載されているので、ぜひ閲覧したい。
http://www.anzen.mofa.go.jp
また、バンクーバー総領事館のホームページでも安全情報等が掲載されている。
www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp
(取材 大島多紀子)
安全対策連絡協議会では質疑応答や意見交換も行われ、さまざまな団体や企業が交流、協力しあえる場ともなっている