2017年3月30日 第13号

子供たちの笑顔がバンクーバーで弾けた。地元の子供たちとサッカーを楽しみ、バンクーバーの人々の優しさに触れ、多くのことを感じた5日間だったようだ。

 

総領事館で。左から、藤本真衣さん、岡井朝子総領事、宮﨑龍馬くん、佐野夢果さん、上原大祐さん。龍馬くんと夢果さんは、「まだまだバンクーバーにいたい」と名残惜しそうだった

 

 バンクーバーを訪れたのは、特定非営利活動法人(NPO)D-SHiPS32(ディーシップスミニ)代表の上原大祐さんと、佐野夢果さん(10)、宮﨑龍馬くん(11)、それに2人をサポートする藤本真衣さんの4人。3月20日から24日まで滞在した。

 23日には在バンクーバー日本国総領事館を訪問。岡井朝子総領事と面会し、バンクーバーの印象や日本の障がい者に関する現状などを話した。

 バンクーバーの印象を聞かれ「すごく人が優しい」と夢果さん。「とにかく優しい。優しいという言葉では足りないくらい優しい」と笑った。

 背景には日本での現状があるという。日本人ももちろん優しいが、障がい者への手の差し伸べ方を知らないため、無駄に気を使ってすぐに行動に移すことができないのではと感じていると上原さん。こうした現状を打開するために、D-SHiPS32では、障がい者と健常者がコミュニケーションを取れる機会を提供し、お互いに理解を深めるイベントをスポーツの楽しさを取り入れながら開催していると活動内容を説明した。こうした活動は、2020年東京パラリンピックに向けた取り組みでもあり、さらにその先につながる環境作りのためと語った。

 そして今回の滞在はD-SHiPS32にとっての初企画。子供たちに両親の付き添いなく初の海外体験をさせるというもの。第1回にバンクーバーを選んだ理由を聞かれ、「大祐さんが活躍した場所だから」と、夢果さんはうれしそうに語った。

 上原さんといえば、2010年3月開催バンクーバー・パラリンピック冬季大会スレッジホッケー日本代表として、カナダを倒しチームを銀メダルに導いたその活躍は、まだまだ記憶に新しい。そんな上原さんが活躍した街を2人は見たかったようだ。

 そして多くのことを吸収、将来の夢も見えた。夢果さんは、「(D-SHiPS32の)バンクーバー支部を作りたい」と声を弾ませた。「バンクーバーから優しさを広げていきたいという思いが強くなりました」。龍馬くんは「マラソンをやりたい」という。走ることは、もともと好き。今回は上原さんに引っ張られ、ダウンタウンからバンクーバー水族館まで走った。日本ではできない経験に目を輝かせていた。

 上原さんは、今後もバンクーバーに子供たちを体験滞在させる企画を継続したいという。日本にいれば障がいがあるということで、大人たちから活動を制限されることも多い。日本ではできない経験を海外で体験してもらうことで、子供たちの夢と自立を応援する。それが日本の将来の環境づくりに必ず生きる。そんな活動を続けていきたいと語った。

 D-SHiPS32の活動については、こちらを参照: http://dships32.com/

(取材 三島直美) 

 

 

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