2017年3月2日 第9号

日加学生フォーラムは、日加学術コンソーシアム(JACAC)に加盟する大学の学生が集い、さまざまな議題において講義やグループワークを通して意見を交換し、相互理解を深めることを目的としている。今年はブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)で2月18日から25日まで開催され、修了式とレセプションが2月24日、在バンクーバー日本国総領事公邸で催された。 

 

日加学生フォーラムに参加した学生たち

 

日加の学生の交流を深める

 日加コンソーシアムはアルバータ大学内にある高円宮日本教育・研究センターが中心となり、日本側では関西学院大学が事務局となっている。今年のテーマは「移民政策と国境 : 統合と排斥」で、日本とカナダから14人ずつ参加した学生が、専門家による講義を受けてディスカッション、グループワーク、最終プレゼンテーションを行った。 現在、JACAC加盟校は日本11校、カナダ10校となっている。学生フォーラムは日本とカナダで毎年交互に開催され、来年は東京にある桜美林大学で開催される。

 修了式は、アルバータ大学の高円宮日本センター所長の藤原文さんの司会進行で行われた。まず岡井朝子在バンクーバー日本国総領事、そしてUBCのパメラ・ラトナー博士(Vice-Provost and AVP, Enrolment and Academic Facilities)が挨拶した。続いて、日本とカナダの学生混合の4人で1組となるグループが、各自のテーマに基づくグループワークの成果を発表した最終プレゼンテーションの結果発表となった。1位に選ばれたのは、日本における外国人のケアギバーの問題を取り上げた「Mochi」。メンバーは岩元晴香さん(立命館大学)、ガルトバヤル・サロールさん(名古屋大学)、スコット・サンジュン・リーさん(UBC)、ケチア・ペリーさん(ヨーク大学)。2位には教育を通して移民が溶け込めるシステム作りを探った「Harmony Builders」が選ばれた。メンバーは井上僚太さん(西南学院大学)、鈴木芹奈さん(明治大学)、エンヤ・ブシャールさん(ラバル大学)、アシュリー・アン・クラークさん(クイーン大学)。また、リーダーシップ賞は、スコット・サンジュン・リーさんと、鈴木芹奈さんにそれぞれ贈られた。続いてフォーラムに参加した学生への修了書授与の際、一人ひとりがテーマに対する意見などを述べた。その後レセプションへ移り、桜美林大学国際センター課長の長岡篤史さんが乾杯の音頭を取った。この日の午前中に最終プレゼンテーションがあり忙しい一日を過ごした学生たちは、やっと緊張の糸がほぐれたかのように明るい表情で、ビュッフェ式のおいしい食事をとりながら歓談する姿が見られた。

 

学生や関係者の声

 高円宮日本教育・研究センターの藤原文所長と、関西学院大学・日本コンソーシアム事務局の垣平沙枝さんに話を聞いた。コンソーシアムは各国14人程度という人数制限があるため、競争倍率が高く選考基準も高い。そんな難関を潜り抜けてきた互いに面識のない学生たちが集まるが、フォーラムのテーマに興味のある人が集まっているので、意見の相違を乗り越えながらディスカッションを重ね、交流を深めていく様子が見られたという。「彼等はみな、柔軟性があってお互いをリスペクトすることができる、こちらが教えられることも多いですね」と藤原所長。このコンソーシアムの同窓生はすでに200人以上に上り、フォーラムが終わった後も交流が続くという。

 今回参加した学生にも話を聞いた。新倉美菜さん(上智大学)は、「大学2年次に日本の大学生を国連の事務局に派遣するというプログラムに応募しました。派遣先がIOM(International Organization for Migration)という国際機関で、5カ月間海外で勤務するうちに移民や難民といったトピックに関心を持ちました。フォーラム初日の自己紹介の時に、同じカナダ人や日本人でも多様性があるという、それぞれの物語にとても魅かれるものがありました。その多様性がぶつかったり、組み合わさったり、アイディアや考えを共有したりすることで、新しいものが生まれる過程というものを体験した気がします」と言う。また、バシアー・A・モハメッドさん(アルバータ大学)は、「私自身がソマリアから難民としてカナダに来ましたので、難民や移民がカナダ社会に溶け込むことの困難というものも分かります。同時に他の人たちがこの問題についてどのように考えているかも知りたいと思っていました。これまで日本のことについてあまり知識がなかったのですが、日本とカナダについて比較するのは興味深いと思いました。このフォーラムでいろいろな価値観や考え方を学び、我々が今直面している問題点についてのディスカッションから得るものは大きかったです」と語った。

(取材 大島 多紀子)

 

参加した学生たちとも積極的に会話をしていた岡井朝子在バンクーバー日本国総領事

 

藤原文 高円宮日本教育・研究センター所長

 

プレゼンテーション1位のグループ「Mochi」。左から、ケチア・ペリーさん、岩元晴香さん、ガルトバヤル・サロールさん、スコット・サンジュン・リーさん

 

プレゼンテーション2位のグループ「Harmony Builders」。左から、エンヤ・ブシャールさん、アシュリー・アン・クラークさん、鈴木芹奈さん、井上僚太さん

 

左から、新倉美菜さん(上智大学)、アン‐ダフネ・バージェロンさん(ラバル大学)、ジャック・ルンチー・リーさん(ウォータールー大学)

 

右から、バシアー・A・モハメッドさん(アルバータ大学)、オビナ・ヴィン‐ボリス・エスモチュクさん、アディトゥヤ・ベラさん(2人ともプリンスエドワード島大学)

 

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