2017年2月23日 第8号

  

(左から)村岡典子さん、加藤晴香さん、生田目謙さん、清野健二さん、アイバン・ホンさん

 

第2回インターナショナル・マザーランゲージデー2017(国際母国語の日)が、ブリティッシュ・コロンビア州サレー市にあるベアクリークパークのパビリオンで2月11日に開催された。クワントレンポリテクニカル大学言語文化学科の主催で、今回のテーマは言語学。カナダの多様な文化伝統をお祝いするため、この日は60人以上が集まり、日本の神輿甚句をはじめ、伝統的なマンダリンの音楽とダンス、フレンチカナディアンの音楽などを楽しんだ。大学言語文化学科のクラビンバル・オリビエさんの開会の挨拶の後、晩香坂櫻會(バンクーバーさくらかい)により神輿甚句が披露された。清野健二さんによる神輿や神輿甚句の説明、手拍子の練習で威勢良く始まった。英語通訳は、クワントレン大学で美術を専攻する学生、カーディナル・ケールさん。清野健二さん、生田目謙さん、加藤晴香さん、アイバン・ホンさんが歌を披露し、同大学の日本クラブの学生も一緒に手拍子で参加した。スクリーンには神輿を担ぐ映像が流れ、朗々と甚句の歌声が響く。日本語がわからなくても、その迫力のある歌声に誰もが圧倒されたようだ。

 

担ぎ手の心を一つににする唄、神輿甚句

 「わっしょい」や「どっこい」などの掛け声は、おそらく誰にも聞き覚えがあるだろう。だが、神輿甚句という歌を聞いたことがあるだろうか。神輿甚句とは、神輿を担ぎながら歌う歌で、民謡と同じく昔ながらの歌である。皆が楽しめる、祭りの甚句。日常生活を歌ったものや恋の歌が多く、人を思う気持ちを大切に表現する。疲れてくると神輿を担ぐのが辛くなったり、皆との呼吸が合わなくなるので、甚句を歌うことで気持ちを盛り上げ、心を一つにする。その思いがそのまま神輿に付けられた鈴に反映し、鈴もまた、リズミカルに甚句と共に鳴り響く。甚句には、日本語独特の情緒や粋があるという。日本語の深みである、わび、さび、情緒、粋を学ばなければ歌の意味を知ることは難しいそうだ。

 

夢を現実に

 櫻會代表の清野健二さんはカナダに来て17年。神輿が好きでたまらないという。「神輿は楽しい、の一言につきます。神輿を通してコミュニティに貢献したいという思いから、この会を作りました。お神輿を担ぐことで、みんなが一つになれるのが一番の楽しみです」と、神輿の話になると、一段と声に力がこもる。現在、建国150周年を迎えるカナダデーに向けて、茅ヶ崎で制作中という神輿。バンクーバーに奉納される神輿は、茅ヶ崎の神輿職人、中里康則さんと清野さんの友情から誕生する。数年前に、神輿のことを少しでも知りたいと、清野さんは茅ヶ崎で唯一の神輿職人、中里さんを訪ねた。そこで、神輿にかける思いから二人は意気投合。それ以来、日本に行くたびに清野さんは中里さんを訪ね、夜遅くまで神輿談義に花を咲かせたという。清野さんが櫻會を結成するにあたって、中里さんは相談役に就任。打ち合わせのために来た中里さんは、バンクーバーがすっかり気に入り、神輿を奉納すると決めたそうだ。中里さんは、あわせて神輿についての講演と神輿甚句の指導も行った。先月は清野さんが日本を訪れ、中里さんが代表を務める会の神輿を担ぎ、神輿甚句の指導を受けた。 短いメッセージの中に、奥深い日本情緒が漂う神輿甚句。清野さんは、神輿だけでなく、神輿甚句にもすっかり魅せられ、「さらに技術を磨いて、バンクーバーの皆さんに、その魅力を伝えていきたい」と意気込む。櫻會のメンバーは歌の練習日が決まっているわけでもないのに、いつも気がつけば集まっている。そんな楽しさをもっと多くの人たちに伝えていきたいと、清野さんは目を輝かせて言う。「湘南の浜風をたっぷりと浴びた神輿が、この夏にバンクーバーにやって来ます。海の街にぴったりの湘南神輿を担ぎたい方はぜひご連絡を!」

(取材 松本 睦)

 

問合せ:
晩香坂櫻會 This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. 
ウェブサイト http://www.vancouversakurakai.com

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。