2017年2月16日 第7号
今回は従来の老人ホーム、ケアホームとは異なるスタイルの施設、アビーフィールドハウスを紹介しよう。『Supportive Living』のカテゴリーに該当して、基本的には介護を必要としないシニアが対象だ。
マーポールにある3階建てのヘリテージハウスで共同生活。普通の住宅を利用しているのでアットホームな雰囲気
マーポールにあるヘリテージハウスでの共同生活
マーポールの住宅街にあるヘリテージハウスの建物が、アビーフィールドハウス・オブ・バンクーバーだ。『プライバシーを守りながら、入居者同士が家族のようにつながり合って暮らす共同住宅』をコンセプトに、英国で1955年に生まれたのがアビーフィールドハウスだ。現在、カナダには合計20カ所のアビーハウスがあるほか、世界各地で展開している。BC州ではアビーフィールドハウス・オブ・バンクーバー以外にビクトリア、ダンカン、ソルトスプリングアイランドなどだ。
安全にプライバシーを守りつつ家族のように
「家族のように」に、こだわるだけあり小規模で、アビーフィールドハウス・オブ・バンクーバーは部屋数16室のみ、全室一人部屋なのだ。夫婦で入居したいという場合、「同時に二部屋空けば可能ですが、実際問題として残念ながら対応は難しいですね」と理事のジュディさん。部屋は、二人が快適に暮らすのに十分な大きさではないという。「一人で暮らすのが淋しいという方が、共同生活を心地よく送ることができるのが、アビーフィールドハウスです」。
入居の際、面接もあり、英語を理解する人でないと入居できない。英語がうまく話せないというのはよくても、理解できるというのが重要だ。「たとえば火事などのとき、ほかの人がいうことを理解できないと危険ですので、最低限、英語を理解する人ですね。現在、英語のネイティブスピーカーでない人は、イタリア系とインド系の女性の二人です。インド系の女性はほとんど英語は話せませんが、ちゃんと理解しています。イタリア系女性は入居時はとても静かでしたが、持ち前の性格で、今では他の入居者ともすっかり仲良しになっていて人気者です」。(ジュディさん)
シニアのためのボーディングハウス
「Independent Livingに該当する施設の多くでも、毎日の食事、週一度の部屋の掃除、リネンの洗濯が、サービスに含まれています。でも、アビーフィールドハウスでは掃除や洗濯もご本人にお願いしています。もし本人が掃除や洗濯をできないようでしたら、家族やヘルパーが行い、アビーフィールドでは一切、行っていません」。(ジュディさん)
そもそも入居者8人の1棟あたり、食事の準備や共用スペースの掃除などを担当するコーディネーターが一人のみ。「シニアのためのボーディングハウス(下宿)で介護施設ではありません」とジュディさんは強調する。介護スタッフは置いていないという。
夜間に救急車を呼ばなければいけないなど、緊急時にはコーディネーターが対応してくれる。しかし、入居者の健康状態が悪化して、介護なしで一人で暮らすことができなくなると、別の施設に移る必要がある。
食事も基本的にはダイニングで他の入居者と一緒に取る。しかし、風邪をひいていて、他の入居者にうつす可能性があるときなどは、自室で食べることもできる。
手頃な費用
アビーフィールドハウスでのボランティアによるアクティビティは、編み物教室や近くの学校の生徒が開催するコンサートぐらいで、大きな施設のように、アクティビティが毎日あるというわけではない。その分、費用は最低限に抑えられていて、シャワー付き部屋は1カ月1475ドル、シャワーなしで1425ドル(どちらも食事代込)だ。さらに『Shelter Aid For Elderly Renters (SAFER)プログラム』も利用できる。
(取材 西川 桂子)
Abbeyfield Houses of Vancouver
(アビーフィールドハウス)
1275 W 67th Avenue, Vancouver
Phone 604-261-1180
www.abbeyfieldvancouver.com
入居者が一緒に食事をするダイニングルーム
温かい笑顔が素敵なコーディネーターのナンシーさん
共用の浴室
エレベーターもある
多くの本やゲームのある部屋で入居者同士がくつろぐこともできる
共用の洗濯機と乾燥機。入居者が自由に利用することができる
普段使わないものはストレージに