2017年1月19日 第3号

 1月15日、ブリティッシュ・コロンビア州コキットラム市東漸寺内の茶室・瑞光軒で裏千家淡交会バンクーバー協会による初釜式が開かれた。初釜とは新春を迎えて 初めてかける釜の行事で、茶人が祝う新年の茶会である。

 同協会会員に加え、岡井朝子在バンクーバー日本国総領事と夫君の岡井知明氏、 コキットラム市長リチャード・スチュワート氏ほかをゲストに迎え、3席には合計約40人が出席した。

 

八畳茶室『瑞光軒』での一席。裏千家出張所駐在講師キース・スナイダー先生が英語で説明を加えた

 

茶道紹介をかねて

 これまでは会員を対象に濃茶を点てていたが、今年は裏千家出張所駐在講師キース・スナイダー先生の提案で会員以外にも声をかけ、薄茶を用意した。

 「日本ではお正月は大切な行事のひとつですが、カナダではそれほど大きなものではありません。日本のお正月や茶道のことを知ってもらうために、初釜式をコミュニティーのみなさんにも紹介したいと思いました」

 午後1時の席には着物姿の岡井朝子総領事と袴をつけた岡井知明氏、リチャード・スチュワート・コキットラム市長ほか日系団体関係者や茶道に興味のあるカナダ人も加わり、境野宗章先生を正客に、初釜式は初めてという岡井総領事が次客を務めた。

 

干支を用いて

 八畳茶室『瑞光軒』。床の間の軸は鵬雲斎(ほううんさい)大宗匠筆『富貴是吉祥(ふうきこれきっしょう)』。貴く豊かに物があることは良いという意味で、良いことが起きるという兆しを象徴するという。長く枝垂れた結び柳は、人と人とを結びつけるという意味を持つなど、スナイダー先生が英語で説明を加えた。

 日本から取り寄せた干支の羊かんに、酉と梅の形の美しい干菓子が出され、和やかな雰囲気の中で薄茶が振舞われた。

 本堂には元旦の早朝に声をあげる初カラスを描いた扇子が飾られたほか、薄器は松喰鶴(まつくいづる)の蒔絵など干支を用いた取り合わせ。正座に慣れない人のために、茶室内には椅子が用意されるなどの心配りも見られた。

 

感謝していただく

 岡井総領事は床の間や道具の拝見を終えると、同席者らと歓談した。知明氏も、バンクーバーで2度めの茶道体験を楽しんだとのこと。 「茶道というと作法が難しいと思う方がいらっしゃいますが、大切なのは感謝してお茶をいただくことです」と境野先生。

 市長のスチュワート氏は「コキットラムにお寺があり大きな鐘があることも知っていましたが、今日初めて建物内の素晴らしい茶室でおいしい抹茶をいただき、うれしく思っています」と感想を述べた。

 残雪に日差しがあたり歩道がきらきらと輝いた午後、出席者たちは豊かな気持ちで東漸寺を後にしたことだろう。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

岡井朝子総領事とコキットラム市長リチャード・スチュワート氏

 

(左から)裏千家出張所駐在講師キース・スナイダー先生、境野宗章先生、岡井朝子総領事と夫君の知明氏、裏千家淡交会バンクーバー協会会長の林光夫氏と恵美子夫人

 

干支の羊かんに、酉と梅の形の干菓子

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。