2016年11月17日 第47号

リメンバランス・デーの11月11日、バンクーバー市内のスタンレーパークにある日系カナダ人戦没者慰霊碑前では、戦没者追悼式典が開催された。

 

日系カナダ人戦没者慰霊碑

 

 この慰霊碑は第一次世界大戦が終結した2年後の1920年に、日系コミュニティーの寄付金により建立された。この日も慰霊碑の前には退役軍人やその家族や関係者が集まり、戦没者の冥福を祈りながら献花がとり行われた。

 午前10時40分、バグパイプの音色を合図に式典は始まった。司会のジャスティン・オルトさんの挨拶のあと、NAVコーラスが『O Canada』を合唱した。

 さらに浄土真宗スティーブストン仏教会による読経が行われ、同教会の生田真見・開教使による、カナダの自由と正義のために尽くした退役軍人や戦没者への敬意と、今の時代が不確実であるがゆえに平和の尊さを願うスピーチがあった。

 そのあと参列者による2分間の黙祷があり、アイリーン・キタムラさんとデビッド・ミツイさんが朗読を行った。

 そして岡井朝子在バンクーバー日本国総領事をはじめとする16団体の代表が花輪を献花し、『God Save The Queen』をNAVコーラスが唱歌した。  式典後は各々の参列者が、慰霊碑台にポピーのバッジを供え祈りを捧げていた。

 式典の司会をした日系4世のジャスティン・オルトさんは、曽祖父が第一次世界大戦に従軍したという。「彼がカナダの国に尽くした犠牲的な貢献に、私は敬意を表すと同時にとても誇りに思っています」と子供たちも連れて参列した。  

 ことし10月に日本からワーキングホリデーでバンクーバーに来た中村愛梨さんは「式典ではバグパイプの演奏、読経、コーラスが流れ、いろいろな文化が存在する国なんだなと改めて思いました。戦争に対しては暴力は暴力しか生まないので大反対です。いまは世界中が不安定な状態で、今後どうなるか心配です」と語った。

 同じく日本から来た安藤翠さんは「リメンバランス・デーによって日系カナダ人について知ることができてよかったと思います。また隣のアメリカでは先日、次期大統領にトランプさんが決まりました。しかし彼は自国のことしか考えず、アジアにあまり好意的ではないようなので将来が不安です」と述べた。 

 バンクーバーで語学学校に通う比留間峰子さんは「とても穏やかな式典で、日系カナダ人の過去を大事にしている皆さんの思いが伝わりました。過去に戦争があったことは事実ですが、それらを教訓にして同じ過ちを繰り返さないよう将来に活かせばよいと思います。日本は過去70年以上戦争がなかった平和な国ですが、だからこそみんなが戦争について学ぶことが大切だと思います」と語り、外の国から日本を見て習慣や考え方が違うことに気づくことも、国際化につながるのではないかと訴えた。

(取材 古川 透)

 

献花団体のリスト
◎日系カナダ退役軍人 第9部隊
◎S−20及び二世在郷軍人会
◎全カナダ日系人協会(NAJC)
◎グレーターバンクーバー日系市民協会(JCCA)
◎在バンクーバー日本国総領事館
◎日系文化センター・博物館
◎RCMP王立カナダ騎馬警察
◎バンクーバー市
◎バンクーバー市公園管理局
◎バンクーバー市警察
◎BC浄土真宗仏教寺院
◎日系カナダ人キリスト教教会
◎生長の家
◎隣組
◎バンクーバー日本語学校
◎カナダ国立公園管理局(Parks Canada)

(敬称略・順不同)

 

退役軍人や多くの関係者が参列した

 

献花を終え、慰霊碑を見つめる岡井総領事

 

浄土真宗スティーブストン仏教会による読経も行われた

 

慰霊碑台には、参列者らによるたくさんのポピーのバッジが供えられた

 

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