2016年11月3日 第45号
「飛行機はどうして飛ぶの?」このような子供たちの疑問に答えるため、日本航空が定期的に行なっている航空教室が10月30日、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドで開かれた。会場となったJTBカナダ・バンクーバー支店オフィスには、定員いっぱいの小中学生あわせて約70人が集り、現役パイロットや整備士の話に熱心に耳を傾けた。
会場は満席。子供たちが積極的に質問していた
子供たちに大人気の、航空教室
バンクーバーで航空教室が開かれるのは、これで3回目。開場前から多くの人が集まるなど、人気の高さが伺われた。
講師を務めたのは、前日にボーイング787型機を操縦してバンクーバーに到着したばかりの内山陽平副操縦士と、バンクーバー空港所で整備を担当する山本陽介整備副長。
パイロットの仕事を紹介
自己紹介に続き、まず内山さんが、パイロットの仕事の流れを解説。空港に出勤したパイロットは、その日の天候や機体の整備状況を担当者と確認したり、客室乗務員との打ち合わせをしたりする。毎日同じ顔ぶれの一般的な職場とは異なり、フライトの度にクルーは異なる。コックピットに入る機長と副操縦士も、同じ顔合わせは1カ月に1回あるかないかだという。そんなクルーがスムーズに共同作業を行うために、乗務員全員での打ち合わせは特に重要だ。
どうして飛行機は飛べるのか?
次に、飛行機についての解説が行われた。そもそも飛行機はどうして飛べるのか?そんな、大人でも答えるのが難しい説明を、内山さんは映し出されたスライドだけではなく、模型飛行機や風船などの小道具も駆使して、わかりやすく説明した。
その鍵は、翼の断面形状にあった。それは魚を上から見たような流線型になっている。ただ、その曲線は上下対象ではなく、上面のほうが湾曲度がきつくなっている。
この形状の翼が空気中を進むと、上面の気圧が低くなり翼、ひいては機体そのものが上のほうに引っ張られる。これが、飛行機を空中に浮かせる力、揚力となる。
一方、そのためには飛行機は前進し続けなければならない。その推進力は、圧縮された空気と燃焼ガスを後方に押し出すことで得られる。それがジェットエンジンの役目だ。
見えない道を、飛ぶ
空は一見、どこでも飛んで良さそうに見えるが、実は地上の高速道路と同じように航路が引かれており、飛行機は所定の航路・高度に従って目的地を目指す。そのためにコックピットにはカーナビゲーション・システムのような航法システムがあり、パイロットがあらかじめ指定した航路を表示、また飛行機にその経路を飛ぶよう指示している。
地味にすごい!整備の仕事
次にバンクーバーでの整備を担当している山本陽介整備副長が、その仕事を紹介。日本航空全体では4000人近い整備資格保有者がいるが、バンクーバーで勤務しているのは2人。もちろんこれは、大掛かりな整備は日本国内の整備場で行い、バンクーバーでは折り返し便に必要な整備を行うといった整備計画に基づいた配置なので、日々の運行に支障はない。
朝出勤した山本さんは、すでにバンクーバーに向け飛行中の飛行機の整備状況やコンディションをオンラインでチェックし、受け入れ態勢を整えておく。
また整備するのは飛行機の外側だけではない。客室内の不具合ー座席のモニターが点かない、テーブルがちゃんと収納できない、なども彼らの守備範囲だ。飛行機の到着後に乗務員からこうした報告があった場合、次の出発までに修理を終わらせるという、まさに時間との戦いがそこにあった。
熱心に聞き入っていた子供たち
2人の講師による話は約2時間続いた。その間集中して聞き続け、また活発に質問していた子供たち。ノースデルタから参加したという陸空君は、最初から最後まで丁寧にノートをとり続けていた。話の内容が難しくなかったかと聞いたところ、だいたい理解できたと、満足げに答えてくれた。
(取材 平野直樹)
記念撮影をする(左から)内山副操縦士、亜仁夏(あにか)ちゃん、南海(みなみ)ちゃん、山本整備副長
いろいろな道具を駆使し、わかりやすく説明する内山副操縦士
会普段は知られる機会が少ない、整備士の仕事を紹介する山本整備副長