2016年9月15日 第38号
日本で370以上のホテル(提携ホテルを含む)を有するAPA(アパ)グループが、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーに本社を置くコーストホテルの株式を取得した。9月6日、バンクーバー市内、コースト・コールハーバー・ホテルで、アパグループ代表の元谷外志雄氏(もとやとしお)、アパホテル社長の元谷芙美子氏、コーストホテル社長の小茂田勝政氏が合同記者会見を行った。
合同記者会見。元谷芙美子アパホテル社長、元谷外志雄アパグループ代表、小茂田勝政コーストホテル社長(左から)
バンクーバーを拠点に西海岸に進出
アパグループは1971年に創業した総合都市開発会社で、1984年にホテル事業へ参入した。記者会見で元谷外志雄氏は、アパグループのホテルが「新都市型ホテル」という独自のコンセプトのもと成長したことを説明。そして、提携ホテルを含めたホテル客室数で日本一となり、経常利益330億円、経常利益率が30パーセントを超えると述べた。「新都市型ホテル」とは、「高品質」、「高機能」、「環境対応型」を特徴とし、使う側の視点に立って不要なスペースを削減しつつ、ベッドやテレビを大型化、また各種スイッチ類を枕元に集中させて使いやすさを追求している。さらに、CO2(二酸化炭素)排出量削減のための工夫を重ね、1室あたりのCO2排出量は一般的な都市ホテルの3分の1となっているとのことだ。
コーストホテルの小茂田社長は記者会見で、アパグループはコーストホテルをサブブランドとして位置づけていると述べた。アパホテルの資本面だけでなく、ホテルシステムのリソースから得るところは大きいとし、両社が協同することで、コーストホテルの顧客により良いサービスを届けることができることを喜ばしく思っていると語った。続いて、アパホテル社長の元谷芙美子氏がスピーチをし、コーストホテルとアパホテルがノウハウを共有し共に成長していくことを期待すると述べた。
アパグループは、ことし6月にアメリカ・ニュージャージー州で北米第1号となるアパホテル・ウッドブリッジをオープンしている。カナダ・アメリカの西海岸を中心に展開するコーストホテルを取得したことで、北米進出へのさらなる足がかりとする考えだ。
今後の展開
元谷外志雄氏によると、コーストホテルはバンクーバーをベースに展開しておりブランド力もあることから、当面は『Coast Hotels by APA』というような形でコーストホテルの名前を残していくという。日本のアパホテルで実施しているメンバーズカードには1100万人以上が登録している。メンバーズカードでポイントを貯めるとキャッシュバックが受けられる。このポイントプログラムはアパホテル・ウッドブリッジでも始められており、いずれはコーストホテルにも導入を考えているとのこと。また、予約システムの統合も早期に進めていきたいとしている。
日本のアパホテルで行われているサービスや施設も導入していくとのことだ。例えば、1室に2人以上が宿泊する際、タオルは色違いのものを用意する。これで誰がどのタオルを使っているか一目瞭然というもので、このサービスはすぐに始める予定だという。将来的には部屋備え付けのテレビを大型化したり、ウォッシュレットの導入も考えているとのこと。また、日本の和の心を表現するために、部屋には折り鶴を置くというサービスも、コーストホテルでも実施するとのことだ。「新都市型ホテル」というアパ独自のコンセプトが、海外でも受け入れられることを確信しているという元谷代表だが、すべてを日本のアパホテルと同じようにすることは文化的背景や習慣の違いからも難しいだろう。北米の人たちに受け入れられるサービスのあり方とアパホテルらしさをどのように融合させていくのか注目される。
(取材 大島 多紀子)
記者会見で質問を受ける元谷外志雄氏
記者会見でスピーチをする元谷芙美子氏