2016年7月28日 第31号

在外公館長表彰授賞式が7月14日、在バンクーバー日本国総領事公邸で行われた。受賞したのはフェンリッチ志津さん。14年間にわたる総領事館での領事秘書及び総領事秘書としての功績が称えられた。

 

参加者全員で記念撮影。前列左から、岡井総領事、志津さん、門田さん

 

 岡井朝子総領事は、志津さんはとても人脈が広く、日系コミュニティだけでなく、各国公館関係者、総領事館管轄ブリティッシュ・コロンビア州・ユーコン準州の州や市の政府関係者など、「私の就任早々あっという間に予定を組んで、仕事がスムーズに運び、非常に有能な印象でした」と語った。

 そんな志津さんが、「自分が就任して2カ月で退職されるのはすごく寂しい」と総領事。「6代の歴代の総領事に代わって自分ができることは何かないかと考えて、公館長表彰ということを思いつきました」と笑顔を見せた。

 フェンリッチ志津さんは2002年7月1日から総領事館の広報文化班で2年間、広文班・領事秘書として職務に当たり、その後、当時の小澤俊朗総領事から、多賀敏行総領事、大塚聖一総領事、伊藤秀樹総領事、岡田誠司総領事、そして現在の岡井総領事と6代の総領事の秘書として今年6月30日の退職まで、総領事館のみならず日系コミュニティに貢献した。

 周りの人からは親しみを込めて「志津さん」と呼ばれる。この日の授賞式には「志津さん」を慕う人々が祝福に駆け付けた。

3度目の正直で思いがけなく総領事館勤務に

 総領事館に履歴書を出したのは36年前。カナダに到着した翌日だった。しかしその時は機会がなく他社に就職。それから2度総領事館より連絡が来たが、どちらも出産のため断った。そして3度目の連絡は14年前。「3度目の正直といいますか」と笑った。採用試験を受け就職。さっそく当時の小澤総領事の執務室にあいさつに行くと、「小沢総領事がたった一言『志津さんは歳はいくつだい?』と、それだけを聞かれたことが今でも忘れられない」と受賞のあいさつで当時を振り返った。「今考えると、年寄りのおばさんをよく雇ってくれたものだと感謝しております」と笑った。

 20年前には夫を亡くした。あまりにも突然で、3人の幼い子供を抱えてシングルマザーとして奮闘する日々が続いたという。母親であり、父親であり、働く女性であり、1人3役をこなしながら、領事館への就職、そして領事秘書及び総領事秘書として14年間を全うした。

 「このような光栄な表彰を受けるなど考えもせず、全く意外なことでした」とあいさつの冒頭で語った。しかし最後に、受賞した理由を「この世の中でシングルマザーで頑張っている母親たちの励みになればと思ったから」と声を詰まらせた。

 受賞にあたり、いろいろなことが走馬灯のように駆け巡ったという。「(この)表彰を受けられたのは私個人の力ではありません」と志津さん。「今回の表彰は、この土地の日系人の皆さまと共にお受けしたものだと考えております」と感謝した。

日系コミュニティと共に14年

 授賞式では歴代総領事から祝電が届くサプライズがあった。出席した関係者からは、日系コミュニティを代表してゴードン門田さん、和歌山県人会代表ジム田中さん、領事館で共に務めた根尾政勝さんが祝辞を述べた。

 門田さんは、「さまざまな行事が成功する裏には必ず優秀な人材が存在している」と志津さんの縁の下の力持ち的な貢献を称え、「日系コミュニティと総領事館の架け橋となってくれて、コミュニティに貢献していただいてありがとうございます。感謝してもしきれないくらいです」と述べた。

 授賞式の後には、出席した友人と言葉を交わし合った。「今日は本当に皆さまの温かみを感じて、いま非常に幸せな気持ちです」。今回は外務省の規定による定年退職。忙しかった日々を振り返り、これから何をしようかと笑う。「皆さんの温かい気持ちをお受けして、これから新しい引退の人生に向かいたいと思います」と晴れやかに笑った。

(取材 三島 直美)

 

表彰状を手に、岡井総領事(左)と志津さん

 

(左から)祝辞に聞き入る志津さんと岡井総領事・夫君の岡井知明氏

 

「志津さんの受賞を心から歓迎したい」と祝辞を述べる門田さん

 

総領事館大谷シェフからは特製ケーキのプレゼント

 

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