ファンが待ち望んだ終了のホイッスルはトロントが得点するまで鳴らなかった。もう少し早く鳴っていれば…と思ったファンは少なくない。 あまりにもスッキリしないあっけない幕切れに、試合後空っぽのBCプレースでトロントFC選手の歓喜の声だけがこだました。
ゴールを喜ぶ遠藤#9(中央)とトロントの選手たちの後ろで信じられないという表情のキャップスGKウーステッド(右から2番目)
6月29日(19,736)
バンクーバー ホワイトキャップスFC 2 - 1 トロントFC
先制はキャップス。47分にMFメスキーダのヘッドが決まり1点目。68分にはDFパーカーがゴールし2‐0とリードした。このまま90分が過ぎ、アディショナルタイムは4分。その4分過ぎにトロントMFジョンソンがゴールを決め2‐1とした。
ああ、無情…ホイッスルさえ鳴っていれば
これほど惨い負け方もないだろう。DFハーベイは「これまでのサッカー人生で最悪の負け方」と言葉を絞り出した。
優勝はすでにホワイトキャップスの手の中にあった。ACC決勝、ホワイトキャップス対トロントの第2戦。トロントでの第1戦は0‐1でトロントが勝利していた。キャップスが優勝するには2‐0で勝つ必要があった。
試合が動いたのは後半。キャップスMFメスキーダが先制ゴール、DFパーカーが追加点を挙げ2‐0と差を広げた。試合はその後4分のアディショナルタイムに突入。すでに時計の針は4分を過ぎ、キャップスGKウーステッドのゴールキックで会場の誰もが試合終了と思い、優勝を確信した。
が、審判のホイッスルは鳴らなかった。それから数十秒後に悪夢は訪れた。この日途中出場のトロントの遠藤が上げたロングパスを、捕球にいったGKウーステッドとヘッドでクリアを試みたDFワストンが衝突し、ボールはGKからこぼれ落ちた。そこをトロントMFジョンソンが押し込みゴール。その直後に無情のホイッスルが鳴り響いた。
選手も、ファンも、優勝目前での失点に言葉もなくぼう然。それまで優勝へのカウントダウンの歓喜の大歓声が響いていたが、一瞬にして悲鳴すらあがらない静寂が会場を包んだ。
試合後ロビンソン監督は、得点された瞬間について聞かれると一瞬言葉に詰まったが、90分間よく戦った選手を称え「自分たちが勝利に値するチームだった」と語った。「サッカーとは時に残酷」と厳しい表情を崩さず、「それを選手もコーチ陣も力に変えて乗り切るしかない」と前を向いた。
工藤の復帰は7月中
今年のACCはこれで終わったが、MLSレギュラーシーズンはこれからが本番。ホイッスルのタイミングは気になったが、試合中、キャップスは何度も得点好機があった。それでも結局は2点しか奪えなかった。修正できるとすれば得点力だ。
FWリベロはチリのチームへの移籍がほぼ確定している。そこで待ち望まれるのが工藤の復帰。6月28日の記者会見後にロビンソン監督に確認したところ、1、2週間以内には復帰の予定という。早ければ9日ラピッズ戦でも復帰が期待できる。遅くとも今月中には復帰する見込み。
チームは現在、ちょうど半分の17試合を終え、7勝7敗3分け勝ち点24で5位と今一つ爆発できない状況でいる。いつまでも悲劇に浸っていられない、そうした決心が監督の表情に浮かんでいた。
トロントが4年ぶりのACC優勝
劇的な幕切れとなった。誰もがホワイトキャップスの優勝を試合終了30秒前まで確信していた。しかし、ACC優勝杯ボヤジャーズ・カップを高々と掲げたのはトロントFCだった。トロントが優勝するのは2012年以来4年ぶり。
試合後、アシストこそ付かなかったもののチームを優勝に導く立役者となった遠藤は、「最初の年でタイトル取れたのは嬉しいです」と笑顔を見せた。この日は74分から出場。もう少し早く交代するはずだったがホワイトキャップスの2点目で一呼吸置くことになった。それでも「試合に出れたのは良かったですし、最終的に劇的でしたけど、勝って良かったです」と終始笑顔だった。
これで2017‐18年CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)チャンピオンズリーグにはトロントFCがカナダ代表として出場する。
(取材 三島直美 / 写真 斉藤光一)
7月のホームゲーム
今月は全7試合。厳しいスケジュールが続く
7月9日(土)7pm コロラド・ラピッズ戦
7月13日(水)7:30pm リアル・ソルトレイク戦
7月16日(土)7pm オーランド・シティSC戦
7月19日(火)7pm クリスタル・パラスFC(プレミアリーグ)戦
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