6月18日、19日の2日間、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市のフォルスクリークでドラゴンボート・フェスティバルが開催された。スタンダードのドラゴンボート競技は20名のパドラーが500mの距離をいかに速く漕ぎ切るかを競うスポーツだ。フォルスクリークでは毎年春先から多くのチームが練習を本格的に行うので見たことのある人も多いと思う。レース後喜びを爆発させる選手達の姿を毎年写真に収めてきて、一度その輪に加わってみたいと思ったものだった。今年はその願いがかなってチーム『OARDEAL』に加入し実際にボートを漕ぐ機会に恵まれたのでそのレポートをお届けしたい。

 

レース中の様子

 

 ドラゴンボートの歴史は長く紀元前の中国が発祥とされる。このボートを使った競技が広く知られるようになったのは1970年代以降。香港で開催されたエキシビジョンマッチを機に現在のような競技形態が確立され、広く世界中に普及するようになった。1986年のバンクーバーEXPOの時に初めて北米でドラゴンボート競技が披露され、以降フォルスクリークで行われるドラゴンボート・フェスティバルはその規模を年々拡大して今やカナダ最大規模を誇る。2016年の参加チーム数は188、ボートに搭乗して競技を行う選手と控え選手、そしてチーム関係者を合計すると約5000人、イベントを支えるボランティアは約400人。屋外ステージや各種フードトラックなどが設置され、選手以外の観客にも十分楽しめるイベントだ。2日間の観客動員数は約6万人と主催者から発表された。


 我々の練習は本大会(6月18日)から遡ること2ヶ月前の4月から始まった。主にパドラー全員のタイミングをいかにシンクロさせるかに重点が置かれた。大会では実際に太鼓を載せて出走するが、練習では載せない。ドラマーが太鼓を叩き、この音に合わせ全員が同じリズムで漕ぐのが伝統的なドラゴンボートの形式だ。しかし8艇が1度に競争すると、自分の艇の太鼓かどうかが聞き分けにくい。タイミングは耳で合わせるのではなく、一番前の列に座るパドラー『Stroke』のタイミングに全員が合わせることで、一糸乱れぬパドリングをするようキャプテンのSusieに指示された。人が載ると1.5トン近い重量の船を速く進める最良方法は、全員がシンクロしてパドリングすることと高速ピッチのパドリング、単純だがこれに尽きる。


 大会1日目の6月18日は終日雨。午前中は息が白くなるほど寒いが条件は他のチームも同じである。この日は各チーム、2回の出走が行われ、翌日行われる500m決勝レースのために予選タイム順にグループ分けされた。コンペティティブとレクリエーションの両カテゴリーでAからEの5段階のディビジョン別に決勝を戦うことになるのだ。


 大会2日目。決勝レースではそれぞれのディビジョンで金銀銅のメダルが授与される。準決勝レースの順位次第で、強いディビジョンの下位チームで決勝レースに臨む場合とディビジョンが一つ降りて弱いグループの上位として決勝を戦う場合とではメダルに届く確率がまったく違う。この表彰方式を知った時、『メダル獲得』という視点から見れば少しアンフェアーに感じた。有利なディビジョンに入るために決勝までは手加減するのも戦略の一つかもしれない。しかしウチのキャプテンSusieはこのような策略が嫌いで、チームメートに「Do your best!」、要するに駆け引きなどせず全力でゆけとの指示だ。私も姑息な手段は好きではないので迷いなく漕げた。私のチームはレクリエーショナルのディビジョンDで決勝レースを戦うことになった。決勝でのタイムは2分32秒で4位。3位とは0.365秒差だ。ちなみに男女ミックスの最速チームは1分57秒。このタイムには到底届かないが、あと0.4秒でディビジョンDのブロンズに手が届いたと思うと今でも悔しい。絶対にリベンジしたいという気持ちになってきた。

 今後バンクーバー近郊でのドラゴンボートレース競技予定は7月23日にハリソンレイク、8月20日にスティーブストンで開催される。リベンジ目指してチーム練習はこれからも続く。

(文 丸山 勧)

 

チーム『 OARDEAL』

 

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