5月30日、着任間もない岡井朝子在バンクーバー日本国総領事がブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市スティーブストンを訪ねた。そこでガルフ・オブ・ジョージア・キャナリーを含む7カ所を巡り、日系人の歴史を見つめた。

 

ガルフ・オブ・ジョージア・キャナリーで当地で捕獲される鮭の種類をジム小島氏(写真左)が岡井朝子総領事に解説

 

工夫を凝らした展示物で見ごたえのある缶詰工場記念館

 岡井総領事のスティーブストン視察はジム小島氏が案内を行なった。初めの視察場所は缶詰工場跡であるガルフ・オブ・ジョージア・キャナリー。大きな館内には漁師たちの姿を模した像や、鮭の缶詰の製造過程が詳しくわかる機械や使用道具が展示されている。この地域で初めてトロール漁を行なったのは日系人漁師であるなど、日系人が盛んに漁業を行なっていた時代のようすを小島氏が、缶詰製造については館内スタッフが丁寧に解説した。同館ではことし4月から来年春までの特別展示「ウーマン・オン・ザ・ホームフロント」を開催中。これは第2次世界大戦中の缶詰工場の操業を支えた女性にフォーカスしたもの。展示物は当時の家庭の再現や、日系人が強制移送となり、従業員の半数が工場から姿を消したことを描写した画像など。当時の人々の暮らしぶりと社会の様子がリアルに迫ってくる内容だ。

 

日系カナダ人の 苦労の姿をしのんで

 次に工野庭園へ。この庭園は1888年に和歌山県三尾村からカナダに渡り、その後、郷里から多くの村人を呼び寄せた工野儀兵衛の功労を称えて造園されたもの。

 その後岡井総領事が向かったのはブリタニア・ヘリテージ・シップヤード。このエリアに建立された日系漁師の像を見た後、舟大工であった村上音吉の旧宅・ムラカミハウスへ。音吉の妻・アサヨの「写真花嫁」に始まる体験は、孫で映画監督のリンダ・オオハマさんによって『おばあちゃんのガーデン』のタイトルで映画化されている。ムラカミハウスの簡素な作りを見た後、向い側に建つ、引き網の保管施設跡へ。

 

コミュニティの交流の場として機能する寺院

 さらにスティーブストン仏教会へ移動。岡井総領事は、生田真見開教師からの話を聞く中、生田氏が祖父、父と三代にわたり同仏教会で開教師を務めていることに驚きを示した。寺が貴重な社交の場であったことを物語る写真の解説にも興味深く聞き入った。また、現在の活動では仏像のある本堂でコンサートを行なうこともあると聞くと、岡井総領事は「面白いですね」と感想を述べていた。

 

日加センターで若き空手チャンピオンに対面

 次に向かったのは日加センター内のスティーブストン日本語学校。岡井総領事は生徒数やカリキュラムの作り方などをスタッフに尋ねて話を聞いた後、熱意ある先生たちに支えられて同校が存続していることを称え、「引き続きご活躍を期待しております」と言葉をかけた。

 さらに日加センター内の武道場を回り、空手のカナダチャンピオンを獲得した経験のある打揚寿美さんに話を聞き、激励の言葉をかけた。

 2時間半で7カ所を回る中、岡井総領事の傍らで細やかな解説を行うジム小島氏の姿と、各所に関する下調べを行い、的を射た質問を投げかける岡井総領事の姿が記者の目に印象的だった。

(取材 平野 香利)

 

日加センター内の武道場で、打揚寿美さん(左)の説明を聞く岡井朝子総領事(右)。中央はジム小島氏

 

ムラカミハウスを訪ねて。ジム小島氏(左)と岡井朝子総領事

 

1989年に造園された工野庭園で。岡井朝子総領事(中央)とジム小島氏(右)

 

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