5月4日、『母と暮せば(英語タイトルNagasaki: Memories of My Son)』の無料上映会がダウンタウンのVancity Theatreで開催された。カナダでの初公開となる同映画の上映会の舞台挨拶には主演の吉永小百合さん、そして音楽を担当した坂本龍一さんが登壇。先着順で140席のところ、数百人のファンが駆けつけ、長蛇の列ができた。

 

「原爆詩の朗読を始めて30年になります」(吉永小百合さん)(Photo by Miyuki Nakamura)

 

 映画は長崎で助産師をしている母親のところに、3年前に原爆で亡くなった息子が幽霊になって現れるというストーリー。母親役に吉永小百合さん、息子役に二宮和也さん、息子の恋人・町子役に黒木華さん。さらに、加藤健一さん、浅野忠信さん、橋爪功さんといった名優陣が脇を固める。人気子役の本田望結(みゆ)さんも、町子が担任する父親を戦争で失った小学生として登場している。音楽は坂本龍一さんが担当、山田洋次監督自らが脚本も手掛けた、笑いあり、涙ありの感動作品だ。

 母と息子の絆や二人の優しい時間を描いたファンタジー作品でありながら、反核、反戦のメッセージが込められている。19時半からの開演だったが、吉永小百合さんと坂本龍一さんが挨拶をすることもあり、ファンを中心に数時間前から長蛇の列ができた。

 イベントのスポンサーは、UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)日本研究センター、及びLiu Institute for Global Issues、The Simons Foundation、SFU(サイモン・フレーザー大学)ダイアログセンターで、朝日新聞社、全日空、リステルホテル・バンクーバーも協力した。

 挨拶を行なったUBC日本研究センター代表のクリスティーナ・ラフィンさんは、まず、スポンサーの各団体、企業に感謝の言葉を述べた。そして「これから上映される『母と暮せば』は、故・井上ひさしさんが2004年に映画化もされた『父と暮せば』に続く作品をつくりたいと考えていた、その遺志を山田洋次監督が引き継いだもの」と紹介した。

 続いて登壇した主演の吉永小百合さんは、英語で「今日、ここで皆さんとご一緒できて光栄です」と挨拶。「原爆で即死した息子とその母親との物語に、坂本龍一さんが感動的な音楽を手掛けてくれました」と語った。さらに、コラボレーションとして行われた前日のイベント、平和の願いを込めた原爆詩の朗読会についても触れた。

 坂本龍一さんは、「2014年に癌の診断を受ける前、オーケストラとのコンサート時に吉永さんと山田監督が直々に控室に来て、音楽制作を打診されました。この二人に頼まれてNOと言える日本人はいません」と、ユーモアを交えて音楽制作を担当した経緯について話した。癌の治療中にスケッチを書いてきたそうだ。

 上映会の後は、「広島と比べて、認知度が低いように思える長崎での悲劇、そして長崎の人たちの暮しについて、よく描かれていました。哀しいけれど、素晴らしかったです」(福岡県への留学経験もあるというUBC学生)、「息子を亡くした母親の人生というのは、なかなか分からないが、それが描かれていてよかった。吉永さんの役が『次の命』を受け継いでいく産婆さんだったことから、哀しい中で希望を感じることができました」(日本人のUBC学生)など、感動の声があがっていた。

(取材 西川 桂子)

 

映画同様、落ち着いた、そして優しい雰囲気の吉永小百合さん(Photo by Miyuki Nakamura)

 

ユーモアを交えながら話をした坂本龍一さん(Photo by Miyuki Nakamura)

 

「最後のレクイエムは長崎市民の合唱グループが歌ってくれました」(坂本龍一さん)(Photo by Miyuki Nakamura)

 

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