4月17日、バンクーバー・アカデミー・オブ・ミュージックで女声合唱団『カトレアコーラス』の25周年記念コンサートが開かれた。
童謡・唱歌・歌曲などアンコールを入れ全24曲を合唱し、主賓の在バンクーバー日本国総領事代理内田晃首席領事ほか約280人に平和への想い、生きる喜びを笑顔で伝えた。
結成25周年を迎えたカトレアコーラス。歌詞を暗譜して全24曲を歌った
北原白秋の詩から
ブルーのドレスに身を包んだ22人のメンバーが、ミュージック・ディレクターの内藤邦子先生の指揮を一心に見つめながら歌う『カトレアに』。シェパードひろ子さんのピアノ伴奏に乗って幕開けたコンサート。
冒頭で内田晃首席領事が、25年という長い間コーラスグループを続け、コミュニティに心のやすらぎ、平和と喜びを与えてくれたカトレアコーラスに感謝の言葉を述べた。
前半は北原白秋の詩による歌で構成され『赤い鳥小鳥』『揺籠のうた』『この道』など聴き覚えのある曲に続き『松島音頭』ではビートの効いたリズムに。メロディーに体を揺らせ、舞台には美しいブルーのシルエットが広がった。
息の合った二重奏
特別ゲストはVSO終身名誉コンサートマスター長井明・長井せり夫妻。長井さんは「日本が地震で大変な今、明日は何が起こるかわからないと感じます。今日はカトレアコーラスが25年間続けてきた精神力を思いながらヴァイオリンとヴィオラでは一番有名なモーツアルトの二重奏曲を演奏します」と息の合った演奏で聴衆を魅了した。
朗読を交え『TOKYO物語』
後半では色とりどりのパステルカラーでカトレアの花をイメージしたドレスに着替え、猪間道明氏の編曲による女声合唱のためのメドレー『TOKYO物語』へ。
「昭和19年、米軍機の爆撃。翌年の東京大空襲(中略)」「人々は家も着るものも、何もかも失っていた。しかしそこに、歌だけがあった」とキム・ハンナさんが英語訳で朗読したあと、『リンゴの唄』『東京ブギウギ』『青い山脈』『銀座カンカン娘』『エピローグ・ここに幸あり』ほかを歌い上げた。
笑顔と美しい姿勢
カトレアコーラスといえば、歌詞の暗譜と笑顔がつきもの。内藤先生も歌いながらメンバーと目を合わせてサインを送り、一体感を作り出していく。
「発声も姿勢も先生から教わった訓練によるものです」と若々しく話すのはアルトの岸本多美子さん(84)。舞台を降りほっとした表情のメンバーを見て「音取りや暗譜が大変だったので、みなさんに良かった、感動したとほめられて、達成感も大きかったようです」と内藤先生が感想を述べた。
生きる希望を
1991年に発足。2011年にはコンサートの収益金を東日本大震災の被災地に寄付し、今回奇しくも平成28年熊本地震が発生したため急きょ募金箱を会場に設置した。
「やはりどんな時にも歌は生きる希望を与えてくれます。私達はカナダの地で美しい日本語を音楽にのせ、温かく優しい心、平和への想い、生きる喜びを人々に伝え続けていきたいと願っています」
「戦後の歌が懐かしかった」「ハーモニーが美しくて私も歌いたくなりました」との感想も聞かれ、カトレアコーラスが提唱する歌うことの喜びが早くも伝わったようだ。
(取材 ルイーズ 阿久沢)
アンコールは長井明さんの親友さだまさし作『夢見る人』
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