4月16日、サットンプレースホテルで、日系プレース基金によるファンドレイジング・ガラ&コンサートが開催された。コンサート出演は、中(あたり)孝介さん、そしてケン・シェさんが率いるバンクーバー・メトロポリタン・オーケストラだ。

 

今回のカナダは3泊5日の弾丸ツアーだったそうだ。「とっても空気がキレイで、湿気のある奄美とは違い、カラッとしていて、夏、気温が高いときも気持ちいいだろうなと思いました。自然もいっぱいあって、最高ですね」

 

今回のガラ&コンサートに出演することになった経緯を教えてください。

 「バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラの指揮者のケン・シェさんとは、2008年12月にテレビ朝日の『題名のない音楽会』でご一緒したことがあり、その縁でお誘いいただきました」


ガラ&コンサートは、日系プレース基金によるファンドレイジングが目的ですが、日系文化センター・博物館はご覧になりましたか?

 「昨日、行ってきました。すごく綺麗な、カナダにあって『和』テイストの建物で、様々な展示物もあり、日本とカナダの歴史を感じました。見ていると、鹿児島から移民された方も多かったようですね(中さんは、鹿児島県奄美大島出身)。

 14日に到着して、すでに二人の鹿児島とゆかりのある方にも会うことができました。今回、初めてカナダを訪れたのですが、カナダにこんなに鹿児島の方がいらっしゃるとは知らなかったので驚きました」


午後6時からのガラ&コンサートでは、何曲、歌う予定でしょう?

 「第一部がピアノとカルテットの演奏で5曲、第二部はフルオーケストラの演奏で4曲プラスアンコール曲を用意しています。バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラとご一緒するのは初めてで、合わせたのも今日のリハーサルが初めてです。みなさん、とても一生懸命で、『引き込む』感じがしますね」


中さんは、1997年に、奄美の民謡である、「シマ唄」を独学で始め、翌1998年5月に初出場した、奄美民謡大賞で努力賞を受賞。2000年には同大賞で新人賞、日本民謡協会奄美連合大会で総合優勝しています。シマ唄を始めたきっかけを教えてください。高校生が民謡を始めるというのは、珍しかったのではないでしょうか?

 「周りはみんなバンドなどに夢中になっていましたから、変わっていましたね。僕は 音楽は好きでしたが、バンドには全く興味はありませんでした。シマ唄を最初にちゃんと聞いたのは16歳…高一のときで、ひらめくものがありました。

 高校一年生のときに、たまたま奄美の文化センターにクラシックのコンサートを聴きに行って、そこに当時、2歳上の当時、高校三年生だった元ちとせがシマ唄を歌いにきていたんです。その声を聴いてから興味を持ちました。それまでは、普通の若者の民謡に対するイメージと同じで、シマ唄は年寄りの歌と思っていましたが、とにかく聴きまくりました」


中さんは、奄美大島出身というだけでなく、住んでいらっしゃるということですね。メジャーデビューしたときなど、東京に行こうとか思わなかったのでしょうか?

 「仕事で東京にいることのほうが長かったりすることもあるのですが、拠点は今も奄美です。小さい島なので、人と人がすごく近いですし、小さな子どもたちは、周りのみんなが育てているようなところが、素晴らしいです。

 反面、狭いので、何かすればすぐ噂が立って、正直、うっとうしいと思うこともあります。でも、そういうところも含めて、奄美では、ちゃんと人と人との温度感がちゃんと生きているなと感じます」


3月1日にデビュー10周年を迎えたそうですね。

 「デビュー前、そしてデビューしてからも、『人』に支えられてきました。ひとつ、ひとつの出会いが、良い方向につないでいただけるものでした。

 僕はカナダは今回が初めてですが、日本だけではなく、台湾、香港、中国といった中華圏でも活動しています。そんな中で、音楽で人を少しでも優しい気持ちにしてあげられるといいなと思っています。優しい気持ちになってもらえる歌をずっと歌っていきたいと思っています」

(取材 西川 桂子)


中孝介 Kousuke Atari
歌手 / 唄者(うたしゃ)
1980年7月13日生まれ。鹿児島県奄美大島出身、在住。 高校生の頃、同年代の女性がシマ唄を歌う姿に衝撃を受け独学でシマ唄を始める。
2000年の奄美民謡大賞で新人賞。同年、日本民謡協会の奄美連合大会で総合優勝。
2006年3月1日EPIC RECORDS JAPANよりデビューシングル「それぞれに」をリリース。
2015年11月11日に10月〜11月のNHKみんなのうた放送曲「目をとじても」をリリース。2016年3月1日にデビュー10周年を迎え、10月29日にはデビュー10周年ライブ開催が決定。その声は「地上でもっとも優しい歌声」と称され日本国内だけでなく、中国からアジア全域でも活動範囲を広げている。

 

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