Tsumuguプロジェクト インタビュー 和太鼓・津軽三味線・奄美の島唄

3人のアーティストによるコラボ日本ではそれぞれプロとして活躍している3人のアーティストが、カナダツアーのために結集、Tsumuguプロジェクトとして、トロント、バンクーバー、ソルトスプリング島でコンサートを開いた。メンバーは、和太鼓の金刺敬大（かなざしけいた）さん、奄美の島唄を歌う歌手、里アンナさん、津軽三味線のはなわちえさん。この3人に話を聞いた。

Tsumuguプロジェクトのみなさん。（左から）里アンナさん、金刺敬大さん、はなわちえさん

ーみなさん、カナダは初めてだそうですね。

はなわ「まずトロントについたんですが、そこでは日系会館で演奏し、日系人の方にお会いしました。みなさんとても温かく迎えてくださって嬉しかったです」

金刺「津軽三味線が人気があるとか、太鼓のグループがいくつかあるといった情報は聞いていました。それでもどういった反応をいただけるか分からなかったのですが、トロント公演ではスタンディング・オベーションをいただきました」

ー公演後、観客との交流は？

はなわ「トロントでは日本の歌をカラオケで歌うことが好きな人がいっぱいいらしていて、アンナさんの歌を聞いてすごく驚かれて『良かった！』『カラオケであの曲を歌いたい！』と話してました」

里「三味線もみなさん聞き慣れているのか、拍手のポイントとかも分かっているようで…」

金刺「日本でも分からないということがあって、説明するときもあるんですけどね」

はなわ「普段から和楽器がお好きでよく聞いてらしているのかなと感じました」

ー私も、日本にいた時よりも今の方が和楽器の演奏を聞く機会があります。

金刺「今までにいろいろなところで演奏してますが、『日本にいた時はそんなに見にいかなかったです』とよく聞きました。奄美の島唄などは日本でもまだまだ知られてないですよね」

ー奄美の島唄は沖縄のとは違うんですか？

里「そうですね。沖縄のとは音階も違いますし。沖縄から入っているものもあるんですが、基本的には本土の5音階でできています。そこに日本の民謡には入らない裏声をちょっと使って歌うので、違った響きで聞こえると思います」

ー三味線も素晴らしかったです。9歳から始められたそうですが練習は大変でしたか？

はなわ「毎日触るようにとは言われてました。チューニングが毎回変わるので、一曲ごとに調弦を変えなくてはいけなくて。また、弦は絹糸なので温度とか湿度の変化ですぐ狂ってきてしまうので、こまめに調弦しなくてはなりません。調弦が5分間もたないといわれてますね」

ー今後の抱負は？

はなわ「今回のツアーで一人でも多くの方に和楽器の音を生で聞いていただき、空気が震える感じとかを体全体で感じてもらえたら嬉しいです。私たちのことや日本のことに興味を持って、日本に足を運んでいただけるくらいに心をつかめたらいいなと思います」

里「歌に出てくる奄美の言葉は（日本人でも）何をいってるかわからない部分が多いんですが、そこから何かを感じてもらえて『すごく良かったよ』と言っていただけたことはすごく嬉しかったですね。今回初めて敬大くんとちえちゃんと演奏して、2人からも得たものがありましたし、それをこれから自分の演奏に活かせていけたらいいなと思ってます」

金刺「伝統をつなげていくということは自分にとってのテーマなんですが、外から見て日本の音楽がどうとらえられているか、僕が日本で学んできたことをここで見ていただいて、それがどう受け止めてもらえるかという経験を、日本に持って帰って自分の言葉などでたくさんの人に伝えていけたらな、と思います」

　4月9日と10日には、バンクーバーのバンデューセン植物園で開催されたSakura Days Japan Fairの会場でも演奏し好評を博した。9日の公演では、『さくらさくら』をアレンジした曲でスタート。続いて里さんが『行きゅんにゃ加那』（奄美の方言で「行ってしまうのですか、愛しい人」という意味）、『豊年節』を伸びやかな美しい歌声で披露した。はなわさんは『津軽小原節』『津軽じょんから節』をソロで演奏。ばちを叩きつけるようにして繰り出す力強い音からは、弦楽器でありながら打楽器のようなところもあると感じる。金刺さんによる『焔〜homura〜』は数種類の和太鼓を自在に叩き鳴らし、勇壮で迫力ある演奏で観客をひきつけた。最後は3人で『月の舟』というこのツアーのために作られたオリジナル曲を演奏。美しい幻想的な音と詞が印象的だった。翌10日にはコンサートだけでなく、和太鼓のワークショップも開催した。また、4月12日にはスティーブストン仏教会でもコンサートを開いたほか、ソルトスプリング島でもワークショップと公演を行う。

（取材　大島多紀子 / Photo by Miyuki Nakamura）