3月30日、ウエストバンクーバー記念図書館で「Hiroshima: Memoirs of a Survivor」の出版記念会が開催され、著者のランメル幸(さち)さんと夫のチャールズさんが出席した。同書は8歳の時に広島で被爆した幸さんが、さまざまな思いを込めて英語で綴った一冊。チャールズさんとのカナダでの生活も描かれている。初めてのウエストバンクーバーでの出版記念会に対する関心は高く、会場には事前の予想を上回る約60人の参加者が駆けつけ、幸さんの言葉に熱心に耳を傾けた。

 

ウエストバンクーバーで著書の出版記念会に出席したランメル幸さん(左)と夫のチャールズさん。ランメル夫妻はスコーミッシュ在住だが、チャールズさんの生まれ育ったウエストバンクーバーにもなじみが深い

 

被爆体験を語り継ぐ決意

 1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下され、幸さんは爆心地から約3.5キロの学校の校庭で被爆した。その瞬間に大きな木の下にいたことで命は助かったが、恐ろしい経験は心に深い傷を残した。戦後も被爆者であるために偏見や差別を経験するなど、苦しみは続いた。このあまりにも辛く、言葉にしがたい経験を長い間、人前で語ることはほとんどなかったが、70歳を過ぎてから本の執筆を決意。特に2011年に東日本大震災による原発事故が起きてからは、「核廃絶のために、自分の体験を伝えなければ」という思いが強くなった。現在は執筆に加えてトークイベントなどにも参加し、カナダで若者に被爆体験を語り継ぐ「グランマ・ストーリーテラー」として活動している。

 

出版記念会での朗読

 今回の出版記念会では、まずチャールズさんが日本と広島、そして家族の歩みについて、スライドショーを使って説明。その後、幸さんが自らの思いを織り交ぜながら、著書の中から「地球が止まった日」や戦災孤児の詩などを朗読した。また、成人した幸さんが東京でチャールズさんと出会い、その後カナダへ渡った時のエピソードの部分ではチャールズさんも朗読に参加。夫婦で息の合った掛け合いを披露した。言葉と文化の壁を越えた二人のロマンスの記録は感動的であると同時にユーモラスでもあり、会場は時折笑いに包まれ、和やかな雰囲気となった。

 

参加者からの反響

 イベント参加者からの反響は大きく、朗読の後は活発な質疑応答が行われた。本を読み感動したというロディー・マッケンジーさんは、英語圏の一般の人々の間では広島のことが十分に知られておらず、幸さんの著書が英語で出版されたことは意義深いと強調。会場で本を購入した人も多く、幸さんは一冊ずつに丁寧にサインし、手渡していた。クリスチャンである幸さんは、「話を始める前にお祈りし、神様から平安をいただいたので、リラックスして自然に話せました」と笑顔で語った。会場には折り紙も用意されており、参加者らは折り鶴を作りながら平和を共に祈った。

(取材 船山 祐衣)

 

著書を朗読する幸さん。約60人の参加者は熱心に聞き入っていた

 

スライドショーでスクリーンに映し出された1962年撮影の幸さんとチャールズさんの写真。1965年に結婚した夫妻は昨年金婚式を祝った

 

会場に用意された折り紙で鶴を折る参加者

 

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