ジャスティン・トルドー首相と全国州首相の環境問題対策に関する会議が3月3日、バンクーバー市コンベンションセンター西棟で開催された。同東棟では3月2日から4日まで、環境とビジネスを考える会議GLOBE2016が開催中で、会議に出席していた首相や州首相の多くがGLOBEでも意見を述べた。 トルドー首相は3月2日GLOBE開会式のスピーチ後、別室で記者会見を開き、詰めかけた記者の質問に応えた。

 

GLOBE会場で記者会見に臨むトルドー首相。 多くのメディアが駆け付けた

 

州政府や先住民族と協力して成し遂げる

 トルドー首相は記者会見で、州政府、市町村、先住民族と協力し、気候変動問題に取り組んでいくことを何度も強調した。「州首相も含めて国民の多くは、カナダの経済発展を望んでいるが、だからといって環境問題を置き去りにしてもいいという考えは持っていない。国民はこの問題の解決に対して、連邦政府、州政府など全ての政府のリーダーシップが必要と考えている。それをこれから我々はやっていく」と語った。

 自由党は昨年の選挙で環境問題に積極的に取り組むことを約束した。10月19日の総選挙で圧勝した後、環境問題への姿勢は国民が大きく注目している公約の一つ。昨年11月末からパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にも首相自らが出席。野党党首、州首相も参加して、カナダが国際舞台で環境問題への積極的な取り組みを行っていくことを宣言し、国内外に決意を表明した。

 その3カ月後というタイミングで開催されたGLOBE2016の舞台は、自由党政権の環境問題への本気の取り組みをある意味、国内外に再びアピールする絶好の機会となった。

 GLOBEの理念はビジネスと環境の両立。カナダの天然資源産業が国内の温室効果ガス排出量の多くを占めていることは周知の事実だが、カナダにとって天然資源産業はカナダ経済を支える重要な産業の一つであることに変わりなく、首相もこの点について否定はしていない。そのためにもビジネスと環境の両立は必要と繰り返す。

 「カナダの首相としての責任の一つに、カナダの天然資源を市場に送り出すという役割がある。これはどの首相も同じ。カナダの経済成長にとって大事な資源のひとつ。21世紀では、その方法として、より責任感を持ってサステナブルな方法でやる必要がある。新テクノロジーの開発や、よりクリーンで、より効果的な採掘法を検討する。そのために天然資源産業は、再生可能エネルギーへと分野を広げているし、環境に優しい技術やプロセスに投資をしている。こういうことをこのGLOBE会議では議論されるし、もちろん州首相との会議でも話し合われる」

 そのサステナブルな方法として技術開発の推進と共に検討されているのが、排出量に課金する炭素課金制度。代表的なのはブリティッシュ・コロンビア州で導入されている炭素税や、他にはオンタリオ州やケベック州のキャップ&トレード制度がある。連邦政府は全国的な炭素課金制度の導入を検討しているとされている。排出量1トンにつき金額を定める方法で、現在の相場は約15ドル。これにはサスカチワン州以外の州は概ね賛成を示しているが、導入にはまだまだ厳しい道のりがあり、この点について首相、州首相も話し合いを行うとしている。

 「これからの1日半で、いい結果が出ること、いろいろな議論が出ることを期待しているし、そうでなくてはいけないと思っている。やらなくてはいけないことがたくさんあるが、州政府、市長、先住民族が、気候変動に関して取り組む姿勢を見せる必要があるし、明日の夜にはいい結果を発表できることを期待している」

 カナダは現時点では前保守党政権が国連に提出した2030年までに2005年比30パーセントの温室効果ガス削減を目標にしている。しかしこれは最低ラインであり、これ以上の努力が必要との意見で首相、州首相とも一致している。

(取材 三島直美)

 

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