素顔の木下さんとオペラに触れた午後3月7日、バンクーバーオペラビル内のホールで昼食会が開かれ、『蝶々夫人』出演中のソプラノ歌手、木下美穂子さんがゲスト出演した。これはバンクーバーオペラ理事の唐沢良子さんが主催・後援したもので、先着申し込みした100人以上が参加した。

 

『初恋』を独唱したソプラノ歌手、木下美穂子さん (www.mihokokinoshita.com)

 

オペラを知ってもらいたい

 「オペラをみなさんにもっと知っていただきたい」と冒頭で挨拶した唐沢さんは長年バンクーバーオペラの理事を務めており、今回のオペラ『蝶々夫人』のメイン・スポンサーでもある。

 唐沢さんによると、バンクーバーオペラはこれまで年に4回の公演を基本として運営してきたが、支援者の多くを占めるシニア層が加齢化していることから、公演体制の見直しが行われたとのこと。

 「来年からはフェスティバル形式となり、5月から6月にかけてあちこちでイベントが行われます。オペラ、ミュージカル、アートのほかに、歌を習っている人向けのコーラスやカラオケ、テントの下で子どもや若者向けのイベントも考えています。たくさんの人に来てもらいたいです」と呼びかけた。

 

まず観てみる、聴いてみること

 唐沢さんはオペラの魅力のひとつとして、まず声の美しさをあげた。

 「これから死んでいく人が響く声で歌ったり感情を込めた演技をするのですから、オペラってすごいですね」

 初心者は馴染みがないと敬遠せずに、まず観てみる、聴いてみることが大切だという。

 「目をつぶって聴いてみてください。言葉がわからなくても惹き込まれるもの、心に通じるものがあると思います。オペラは映画と違い、同じものの繰り返しではないのです」

 

独唱と質疑応答

 5日のオープニングナイトをスタンディング・オベーションで終えた木下さんは、あと2回の公演を控えていることから「公演中につき、のどを守るために1曲だけ歌わせていただきます」と美しい声で前置きし、ピアノ伴奏で日本歌曲『初恋』を独唱。のびやかな声が会場に響き渡り、思わず息を呑んだ参加者から大きな拍手が沸いた。

 その感動はさらに、質問に答えてくれる木下さんの生の声へと続いた。

 「前回『蝶々夫人』を演じたときは妊娠5カ月でしたので、今回母親となって初めて蝶々さんを演じました。最後に子どもと別れる前に歌うアリアでは、より一層思い入れも深く、いとおしさを込めて歌いました」

 「舞台に立ったら完全に蝶々さんになっていて涙も出ます。その一方で、声のコントロール、歌を歌わなければならないと考えるもうひとりの自分がいます」

 「来年日本で『トスカ』を歌います。声を守って成熟度を考えていかないと、役によって声をだめにすることがあります。5〜6年前の自分だったら危険だったと思いますが、この役を歌える時期が来たと思っています」

 きれいなドレスを着て歌うオペラ歌手を見て「ピアノよりこれがいい」と母親に志願したことや、『蝶々夫人』での子役の採用エピソードなど、素顔の木下さんとオペラについて触れた午後。心配りいっぱいのランチと、購入したCDに書いてもらった実筆サイン。夢のようなひとときがあっという間に過ぎた。

(取材 ルイーズ阿久沢 / 撮影 那須則子)

 

参加者からの質問に「一番好きなのは『ラ・ボエム』のミミ役です」

 

バンクーバーオペラ理事で『オペラトーク』を主催・後援した唐沢良子さん

 

バンクーバーオペラ代表のジェームス・ライト氏から感謝の額を手渡された唐沢良子さん。左は木下美穂子さん(バンクーバーオペラ www.vancouveropera.ca)

 

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