2月26日、公邸料理人、岩坪貢範(たかのり)シェフによる日本食材を使った料理のデモンストレーションと日本酒のペアリング『クイジーン・クロスオーバー』が日系文化センター・博物館で開催された。これは在バンクーバー日本国総領事館が日系センターとBC州酒協会と共催したもので、カナダの調理師学校、フード・ブロガー、メディアなど招待客約35人が出席した。
公邸料理人、岩坪貢範シェフ
◇外交は食にあり
日系文化センター・博物館ロジャー・レミレー館長と五明明子理事の挨拶に続き、岡田誠司総領事が元外交官の著書『外交も食にあり』を掲げた。現在グレーター・バンクーバーには約850の日本レストランがあるが、80年代に岡田総領事が赴任したとき、オタワにはほとんど皆無だった。「当時のピエール・トルドー首相が晩餐会で日本料理を大変喜んでくださいました」と、食というものが外交においていかに大切かということを説明し、和食は2013年にユネスコ無形文化遺産として登録されたことを述べた。 岡田総領事の公邸料理人、岩坪貢範シェフの専門はフレンチで、公邸での会食には招待客に合わせてジャパニーズ・フュージョンフレンチ料理を作ってきた。岡田総領事の帰任とともに岩坪シェフがカナダを離れることから「人の味覚・好みというものは変わっていくものです。日本の食材を使ったフュージョン料理を今日は岩坪シェフが紹介します」と挨拶した。
◇わさびの茎に驚きの声
この日のメニューは『酒粕風味の鳥レバーペースト』と、『わさび漬けのリブアイソテー・オニオンフォンダン添え』の二品。テーブルの上に設置された鏡に調理の様子が映し出される中、岩坪シェフの解説を総領事館職員のマーク・クイグリーさんが通訳した。
レバーは酒粕、牛乳、砂糖を混ぜ冷蔵庫で半日寝かせたあと、うまみを出すために焦がさないように炒めるのがポイント。炒めた野菜とともにブレンダーにかけてざるでこし、さらに血管や筋を取り除く。「スムースで臭みがない」「タパスのようだ」と好評だった。
酒粕、新鮮なわさびはどちらもグランビル・アイランドで購入可。わさびには殺菌効果があり、リブアイ100グラムにすりおろしたわさび15グラムをつけて半日置くとよいと説明すると「わさびの茎を初めて見た」と参加者から感動の声があがった。
◇日本の食材と日本酒の可能性
レバーペーストには純米吟醸『真澄』が、リブアイソテーには特別純米酒『天の戸・美稲』がペアリングされ、D Way Beverage Inc.の宮本怜さん、Jizake Japan Canadaの渡井憲さんが酒の製造法や種類、保存について説明した。
岩坪シェフは「日本独自の食材及び調味料の使い方と、和食以外の料理にも合わせられる日本酒の可能性を紹介させていただきました。和食と日本酒の魅力をより多くの方々に知っていただき、バンクーバーのレストランと日本酒の関係が近くなることを願っています」と話している。
(取材 ルイーズ阿久沢)
岩坪貢範(いわつぼ・たかのり)シェフ
専門はフレンチ。 富山県高岡市龍谷高校調理科卒業後、東京国立エコール辻フランスイタリア料理専門カレッジ卒業。神奈川県内のホテルのブライダル調理部、東京南青山の葉山庵TOKYOで経験を積み、2013年よりバンクーバー総領事館公邸料理人となり現在に至る。
調理の様子が鏡を通してわかる。左は通訳を務めたマーク・クイグリーさん
『酒粕風味の鳥レバーペースト』には純米吟醸『真澄』が、『わさび漬けのリブアイソテー・オニオンフォンダン添え』には特別純米酒『天の戸・美稲』がペアリング
食というものが外交においていかに大切かということを説明した岡田誠司総領事
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