杉下洋輔(すぎしたようすけ)さん
バンクーバー市内で。2月
大学を修了しても、就職はいつの時代も難しいもの。希望の仕事ならなおさらだ。今回はブリティッシュコロンビア大学(UBC)を修了し、グーグルへの就職が決まった杉下洋輔さん(24歳)を紹介する。
専攻は統計学。日本の高校を卒業し、アメリカのボストンにある大学に入学。2013年にUBCへ編入し、昨年12月に全課程を修了した。この春からはモントリオールのグーグル社で社会人としての一歩を踏み出す。
英語習得は自己流で
日本の高校を卒業した同年の秋にボストンの大学に入学した。ボストンでの在学時に英語の授業を受けていた時は「さすがに大変でした。周りはみんなアメリカ人ばかりだったので」と笑ったが、授業で英語に苦心したということは特になかったという。理系だったことも助かったと語ったが、留学前から英語の勉強は始めていた。
アメリカ留学を決めたきっかけは、科学系の研究者になりたかったから。「科学を研究するんだったらアメリカが一番いいと思うので」。大学院から来るなら大学から来た方がいいと思った。そのためには英語が必要。アメリカ留学を考え始めた高校時代から英語の勉強を始めた。卒業する1年くらい前。ただし自己流。英会話学校などには通わず、CDを使って独学した。
「CNNとか、なんでもいいですけど、スクリプトが付いているCDを買うんですよ。そのスクリプトを最初は見ないで聞いて、自分でおんなじことを言えるかどうかを試してみて。分かんなかったらスクリプトを見て、こういうことを言っていたんだなって。それを繰り返す感じです」。
英語習得にはかなりの時間を費やした。「大変でしたけど」と笑ったが、「でも楽しかったので。勉強という感じではなかったです」。アメリカに行ってから会話については「最初は大変でしたけど」と振り返ったが、「リスニングができさえすれば基本があるんで、あとは何とかなる感じです」。在学中は、「勉強は大変でしたね、宿題が多くて」。それでも英語で困ったことは特になかった。
アメリカの大学からUBCに編入したのは、「行っていた大学が自分に合わないと感じたから」。カナダの大学の方が授業料が割安なことや、「もともと数学を勉強しようと思っていて、UBCは数学が強いと聞いたので」、編入を決めた。
研究者への道はボストン時代にすでに捨てていたという。統計学を専攻しようと思ったのは、「コンピューターサイエンスは、技術が変わるのがすごい早いんですよね。一つの技術を学んでも3年後にはもう使えなくなるとか。でも統計学はそういうことがあんまりないので」。統計学を選択してよかったかと聞くと、「いい選択だったと思います。ちゃんと仕事が見つけられたんで」と笑った。UBC時代、統計学関係のインターンシップを取得。それが就職へと繋がった。
インターンシップから就職へ
大学在学中に最も大変だったのは、「仕事を見つけること」だったと語った。インターンシップ先の話だ。最初のインターンシップは2014年夏。サンフランシスコのマイクロソフト社に統計学関係で決まった。その時は「見つかっちゃったって感じだったんです」。
しかし、翌年に再びインターンシップ先を探す時は苦労した。約10社面接を受けて、唯一受け入れがあった。「それがたまたまマイクロソフトで。たくさん面接をするっていうのは大変でしたね」。2回目のマイクロソフト社はシアトルで、統計学とは直接関係なく、ソフトウェア開発関連だった。これはUBCで勉強以外にサイドプロジェクトでソフトウェア開発などをやっていた経験が決め手となった。
在学中、最も楽しかったのはと聞くとインターンシップ時代の経験と語った。「2年前、マイクロソフトでインターンしていた時に、仕事以外でもサイドプロジェクトみたいなことをしてて、他のインターンの人たちとソフトウェアを作ったり。そういうのがすごい面白かったので、やっぱりこういうソフトウェアをもっと作りたいなってことを思いました」。
そうした経験がグーグルへの就職につながった。何社か応募した中でグーグルに決まった。UBCでグーグルがWomen in Computer Scienceというイベントを開催。興味があり行ってみたが、女性ではないということで断られた。しかし、その時にいたグーグル社の関係者に履歴書を受け付けていることを聞き、即応募。結果、面接が決まった。
同社ではクロームのデータ分析チームに所属する。グーグルでは就業時間の20パーセントをどんなことにでも使えるというシステムがあり、「クロームの機能を追加できるものを作れればいいと思います」とこれからに期待した。
杉下洋輔さんLinkedIn:www.linkedin.com/in/yosukesugishita
(取材 三島 直美)
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