ピップエレキバンで知られるピップフジモト⑭の主力事業は医療衛生用品の卸業と自 社開発製品の製造販売。カナダでもピップエレキバンは18年前から代理店を通して販売がスタートしているが、東部が中心で西部はこれからというところ。そ の北米に切り込み隊長としてやってきたのが薄竜太郎氏である。 薄氏の経歴を語る上で欠かせないのは、新タイプの磁気治療器「ピップイーバン」のこと。研究部の一員として大学や病院を回り、本製品の基幹技術について の臨床検査を進めた。それは新製品の基になる「回転する磁石を体に装着した場合の効果」を科学的に明らかにしようとする試みだった。そして薄氏は新技術の 効果のすごさに「製品化を自分で手がけたい」と開発部へ転属願いを出すほど惚れ込んだという。 製品化成功までに2年を費やし、広報計画にもかかわった薄氏。いよいよ販売開始という直前で、海外駐在員の社内公募を知る。市場導入目前の新製品に後ろ 髪を引かれながらも、新たな世界にチャレンジした。2005年1月にバンクーバーに赴任し、ちょうど1年が経ったという薄氏に話を伺った。 北米支社の業務内容は? まず一つは弊社の開発商品を北米で販売することですね。現在販売中のエレキバンについては、店頭で、置かれている様子を見ては、店長と話をして販売促進 策を考えています。他の商品販売としては、医薬品・医療用具は法的規制が厳しく販売許可が得にくいので、最初は規制がなくどんな店でも置けるストッキング から導入していこうと考えています。圧迫固定ストッキング「スリムウォーク」という製品ですが、品質にはかなり気を遣っていて日本国内で評判を得ていま す。今は製品のカナダでの受容性を探るべくテスト中です。市場調査のため、デパートの下着売り場に行って商品を手に取ってみたりしていますが、おじさんで すからなるべく目立たないようにしています。まかり間違ってもスーツでは行かないようにと(笑)。 もう一つの仕事の柱は、日本にない商品を見つけて日本に輸出することや新規商品のネタ探しですね。こちらでいいものでも作りが大雑把だったりする場合、 手を加えれば日本でも売れるのではないかと思って、見つけた物を片っ端からダンボールに詰めて本社に送っています。 北米で製品を展開させていくためにどんな点に力を入れていますか? やはり人が基本ですよね。北米への赴任にあたり取締役から「お前の仕事は飲みに行くことやぞ」と言われました。それは「人とつきあいなさいよ」というこ とだと理解しています。出来るだけ殻に閉じこもらず、地道に人に接していこうと思っています。現在、ここでは私一人なのでルーティーンワークはありません し、赴任期間後、北米支店が存続するかは私の仕事ぶり次第だと思うと責任を感じますね。 ***** 話上手で人をそらさず、「やればできる」のマインドが伝わってくるような薄氏。バンクーバー貿易懇話会2006年の記念行事の準備委員や日加ヘルスケア協会のウェブ作成など、仕事外の業務への取り組みも精力的だ。 (取材 平野香利)
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