カナダ西海岸を中心にカリフォルニアやハワイにも施設を持つコーストホテルズ 。内藤周八氏は、親会社である日本企業の岡部⑭に入社し、ハワイで鮭養殖業部門を担当後、ホテル部門へ異動。90年にトレーニングを受けてから、当地で コーストホテルグループの長を任されている。昨年7月には、日加商工会議所の会長を小松和子氏からバトンタッチし、会社の外での活動もさらに多忙となった 内藤氏に話を伺った。 数あるホテルのなかで、自社として差別化を図っている点はありますか? 特別に差別化というのでなく、ホテル業はサービス業ですから、サービスという基本を大切に、一人一人のお客様に興味を持って、お客様のニーズをより理解 できるよう努めています。当社のホテルのコンシェルジュは顔を見ればお客様の名前がわかる。そうしたスタッフが強みです。おかげさまでリピーターの方が多 くいらっしゃるため、S や911事件の頃でも、影響は大きくありませんでした。 そうした人材をどのように育てているのですか? 育てる以前に、まず自分より賢い人間、若くて有望な人間を雇うことに力を入れています。彼らが将来を背負っていく人になるわけですから。当社では人事部を『Human Resource』とは言わず、『People & Culture』と呼び、スタッフを『Employee』とは言わず、『Ambassador』と呼んでいます。外から見れば、みんな「コーストの人間」。そのことを表しています。 また私たちが社員の上に立って指導するのではなく、会社の方針を聞きながら、彼ら自身がオーナーシップを持って実行する形をとっています。つまり政策は 伝えるけれど、実際のところを知っている彼ら自身が、どのように実行するかを考えて行動する。言い出しっぺとなると、「できない」とは言えないですよね。 なるほど、そうやって社員の皆さん自身が主体的に仕事に取り組んでいかれるわけですね。 子どもではなくて、大人ですから。「ああやれ、こうやれ」ではなく、答えは与えず考えさせるようにしています。待つ立場として、はがゆい時もありますけ どね。仕事を任せて、良いことがあればそれはスタッフのおかげ、悪い時には僕たちの責任と考えています。 また、社員が仕事をしやすい環境を作るために、当社ではアンバサダー・サーベイ(社員意識調査)を行っています。社員の意見が社の経営に反映されますし、これがマネージャーのボーナスにもつながっています。 内藤さん自身で、仕事や生活における座右の銘や心がけていることはありますか? かつてクライスラーの社長だったリアイ・コカ氏の語った「書けないことは絶対やるな」という言葉でしょうか。考えるだけではなく、書ければ実行できると 思いますので、必ず書くようにしています。それと、かつての上司に教えられたことですが、「やっておいたほうがいいかな」と感じたことは、必ずやっておく ということです。これは経験を重ねて、その大切さを実感しています。あとは、「人生のバランスを持とう」ということで、仕事が忙しくても私生活の時間を取 り、休みのときは徹底的に子どもと遊ぼうと思っています。 (取材 平野香利)
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