今回のワークショップには35名ほどの参加者が集まり、幼稚園科、小学科、中学・高校科、基礎科の小・中学生、高校生と大人という5つのグループに分かれて日本語の授業に役立つアイデアや成功例などを話し合った。開催に際してJALTAの江川元明会長は「有意義な意見交換ができる場所となればいいですね。先生同士の交流も深めて欲しいです」と話した。また、中元優子副会長は前回のワークショップ後の反響について「すぐに役立つ情報やアイデアがたくさん出ていてとても参考になったという感想をたくさん頂きました」とし、好評のため今後も継続していく意向を示した。
現役の日本語教師による活発な意見交換
幼稚園科のグループでは手遊びや歌、クラフトなどを通していかに子どもの興味をひきつけ楽しく日本語に親しませるかについて考えた。就学前の子どもは授業のあいだ集中力を保つのが難しい。歌やゲーム感覚で言葉を覚える工夫をして、子どもが楽しい雰囲気の中で日本語を学んでいくアイデアが参加者からたくさん出ていた。
小学科はひらがな、カタカナ、漢字と効果的な文字指導が求められる時期。普段あまり使わない日本語の文字を週1回の授業でどのように定着させるかは、先生たちも試行錯誤されているようだ。漢字の学習では、正しい書き順や、複雑になってくる中学年以降の漢字の指導などについて様々な意見が出ていた。また宿題の出し方や内容についての意見交換など現在小学科を教える先生たちにはすぐに活用できそうなアイデアがいろいろ出ていたようだった。
日本語に対する興味を持ち続けさせることが課題ともいえる中学・高校科では、生徒が関心を持てる内容の新聞記事や本を活用することで、もっと日本語に親しむことができるのではと提案。生徒自身が意欲を持って日本語に取り組めるように、年齢にあった図書を選ぶ、生徒が興味を持っていることに関する記事などを提供するための実践的なアイデアが出された。
日本語を家庭で話さない生徒を対象とする基礎科のグループの話し合いでは、日本語の会話力をつける方法や文法の教え方に重点が置かれていたようだ。家庭で日本語が使われている場合、文法的なことを考えず自然に覚えていくことが多い。一方、そういう環境にない生徒には文法をきちんと指導する必要が出てくる。継承語の生徒を対象とするグループとは違った視点での意見が活発に交わされていた。また高校生以上や大人の生徒の場合、取りあげる内容も年齢に合わせたものにしていくことが求められる。インターネットやPCを活用して教材を作成し、授業をどのように進めていくか様々なアイデアが参加者間で交わされていた。
和やかな雰囲気の中で先生同士の交流も深まる
参加した先生からも「いろいろな先生方の意見を参考にさせてもらい勉強になります」、「たくさんのアイデアが出てとても楽しくあっというまに1時間半が過ぎてしまいました」という感想が聞かれた。効果的な指導方法などを実際に応用することで授業の質を高めたいという先生たちの意欲がいっそうの日本語教育の発展につながりそうだ。