苦難に耐える心を育てたい

バンクーバーのイングリッシュ・ベイで正月恒例の行事として定着した糸東流空手の海中寒稽古。1月16日、50人を超える参加者で開催された。この日は例年、朝から雨模様だが、稽古の始まる正午すぎから雨が上がる不思議な吉例の行事だ。空模様と同時に全員の意気は上がり、準備体操、形、ランニングなどで十分体を温め、いざ海中へ。見物人からもどよめきが起きた。 

 

(左)アレッサさん(17歳)は面倒見のよいお姉さんだ。10歳の時から空手を始めたという 

 

空手人気、上昇の気配

 2020年の東京オリンピックの競技種目に空手がノミネートされたというニュースが後押ししているのか、ここカナダでも関心が高まりだした。寒稽古のイングリシュ・ ベイの会場も昨年以上に、今年は賑わいが増した様子だった。

   集合時間早々、Evolution 1079 BCITラジオ放送の取材陣も到着。準備体操や形の練習が始まると、早速、観客へのインタビューや寒稽古のかけ声や空気感を拾い始めた。こうした広がりは、さらなる空手愛好者の増加につながるに違いない。空手をはじめ日本武道は、競技技術の向上や強さだけではない、「礼に始まり、礼に終わる」礼儀や相手をいたわるやさしさ、忍耐力を鍛えるなど、精神性を重視した指導がされる。それが、日本文化の奥深さを知る契機になるのではないだろうか。     

 

佐藤師範が新年早々、 感銘を受けた言葉があるという 

 「1月8日に行われた在バンクーバー日本国総領事公邸新年会でのこと、岡田誠司総領事が『大信不約』(たいしんふやく)という言葉を紹介された。世界は国と国ではなく、人と人の気持ちが通じれば、宗教や文化の違いがあっても理解し合える…私は、空手の指導で世界43カ国に行きましたが、その体験から、岡田総領事の言葉をそんなように理解し、共鳴し、感銘を受けたのです。カナダ国内にも様々な国の人が生活していますし、私たちの道場でともに汗を流したり喜びを感じ合ったりしていますが、通じ合えるものです。日本武道の精神性は、混迷を深める現代にあって、光を放ち始めたように思います。理解されやすくなったようになりました」と、糸東流空手道正晃会の佐藤義晃師範。46回目の海中寒稽古を終えて清々しく話していた。

 

バンクーバー糸東流空手道正晃会の 明日を担う2人

 海外へ指導に出かけることも多い佐藤師範に代わって、バンクーバー道場で指導にあたっているのが山本安彦さん。13歳のときに両親とともにカナダへ移住。15歳のとき糸東流空手正晃会に入門。1984年、24歳のときカナダ全国空手大会に優勝。以来1985年、1986年、3年連続「形部門」で優勝。BC州のチーム代表として数々の大会に出場した。そんな空手人生で育んだものは礼儀作法、謙譲の心。「仕事などで今も日本へ行くことがありますが、『日本人より、日本人らしい』とよく言われる」そうだ。

   子供の部(7歳から15歳)での指導をするのが琴アンダーセンさん。現在、UBC大学の看護師コースに在籍中。自らも2段を目指して練習に励んでいる。「看護師を目指す上で、空手の練習は、病気の患者さんを抱きかかえられるぐらいの体力、そして我慢強さを身につけるのに役立ちます。また、子供たちからエネルギーをもらい、 『初心、忘れるべからず』を座右の銘にがんばっています」と語る『大和なでしこ』琴アンダーセンさんは、糸東流空手正晃会のホープなのである。 

(取材 笹川 守)

 

Evolution 1079 BCITラジオ局のインタビューに応える佐藤師範

 

ハンターくん(8歳)「我慢強く、ジェントルになった」とお母さん

 

親子参加。父マイクさん(左)、母リンダさんに抱かれたエバちゃん (1.5歳)。海中体験も砂遊びも満喫した

 

子供の部で熱心に指導する琴アンダーセンさん(左)

 

カナダ全国空手大会に出場するジェドリック福山君13歳(右)を指導する山本安彦さん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。