年末年始からの厳しい寒さが少し緩んだ1月8日、在バンクーバー日本国総領事公邸で、新年会が開かれた。岡田誠司総領事、寧子夫妻主催による新年会は、在留邦人・日系人関連団体代表者、学術関係、文化関係、ビジネス関係者等を招待して4回に分けて開催される。この日はその第1回目の会で、約40人が出席した。

 

新年の挨拶をする岡田誠司総領事。屏風に掲げられているのは岡田総領事の今年の抱負

 

大きな信義を持って

 この地で3回目の新年を迎えたという岡田誠司総領事は冒頭の挨拶で、2015年にはバンクーバー市と横浜市など、3つのBC州の市が日本の市との姉妹都市提携50周年及び30周年を祝ったこと、女子サッカーワールドカップやラグビーなどの大会が開かれたことなど、さまざまなイベントを通して、外交的にも実りある年であったと語った。さらに、昨年12月末、日本と韓国との間で、慰安婦問題に関して「最終的かつ不可逆的な解決」で合意に至ったことに触れ、これからの両国の新しい関係へ大きな意味を持つものとした。一方で、サウジアラビアとイランの国交断絶や、北朝鮮による核実験の実施など、2016年が騒がしい幕開けを迎えたことで、総領事としてこれからもやるべきことが多数残されていると感じると述べた。そうした中でも「みなさまにとって2016年が希望に満ちた良い年となることを祈念してやみません」とし、総領事をはじめとした総領事館館員が一丸となって、日加両国が良好な関係を続けていくことへ尽力していく所存であると述べた。

 また、今年の岡田総領事の抱負として「大信不約(たいしんふやく)」という言葉をあげた。これは「大きな信義を果たすためには約束は必要ない」ということであると説明。本当の信義というものは約束などをしなくとも守られるものだという気持ちで、今年1年、やるべきことに取り組んでいきたいと語った。

 

今年も良き年になるように願って

 続いて、来賓を代表してゴードン門田さんが挨拶に立った。過去60年近くにわたって、歴代の日本国総領事と関わる機会があったが、「(岡田総領事ほど)日系コミュニティと深く交流されている総領事は非常に少ないと思います」とし、日系人の歴史に強い関心を持ち深く勉強されていること、また日系コミュニティへの多大な貢献に対して謝辞を述べた。また、岡田総領事の今年の抱負に触れて、不安定な昨今の世界情勢の中において「世界平和というと大きな表現になってしまいますが、ひとりひとりが何かできればいいのではないかと思います」と新しい年への希望を語った。その後、岡田総領事夫妻をはじめとする6人で鏡割りが行われ、岡田総領事の音頭で今年が素晴らしい年になることを祈って乾杯。この日は、BC州日本酒協会から、D-Wayベバレッジ、ブルーノート・ワイン&スピリッツ、アクシスプランニングの3社が日本酒を提供した。

 出席者は、お節料理、ちらし寿司、お雑煮など、新年のお祝いの席にふさわしい食事を楽しみながら、成谷百合子さんによる箏と、山本篁風(こうふう)さんの尺八の合奏で、『富士』と『千鳥の曲』に耳を傾けた。2曲目の『千鳥の曲』は、「塩の山 差出の磯にすむ千鳥 君が御代をば 八千代とぞ鳴く」といった歌詞が入った変化のある構成の曲。新春を彩る優雅な箏と尺八の音色にみなが聞き惚れていた様子だった。岡田総領事夫妻はじめ、出席者同士の話も弾み、和やかに交流を深めた新年会となった。

(取材 大島多紀子) 

 

(左より)林光夫さん(日系文化センター・博物館会長)、久保克己さん(桜楓会会長)、水田治司さん(バンクーバー日本語学校及び日系人会館理事長)、岡田誠司総領事、ゴードン門田さん(元日系文化センター・博物館会長)、岡田寧子夫人による鏡割り

 

成谷百合子さん(左)による箏と、山本篁風さんの尺八の優雅な調べを楽しむ

 

挨拶をするゴードン門田さん。門田さんの左側に見える花を始め、会場内に飾られた花も岡田寧子夫人によるもの

 

さまざまな和食のメニューに加えてお節料理やお雑煮も

 

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。