新年の気分まださめやらぬ1月9日、バーナビー市の日系文化センター・博物館で、この地域初となる畳を56枚敷いた(130m2)日本武道の本格的な道場が完成し、披露式典が行われた。在バンクーバー日本国総領事館岡田誠司総領事夫妻をはじめ、多くの来賓を迎え、祝賀気分も大いに盛り上がった。  この武道場の建設に関わってきた関係者がテープカットをし、いよいよオープン。祝辞の後、合気道、柔道、空手の模範演技が行われ、張り裂くような気合と、受け身のときに畳を打つ音が響いた。新しい武道場に「魂」が入ったときだった。

 

剛気にして優美な門標

 

日本武道の振興は、日本文化の振興 

 祝辞に立った在バンクーバー日本国総領事館の岡田誠司総領事は、「この素晴らしい新武道場がいま完成したことは、誠にタイムリーなことです。2020年の東京オリンピックの競技種目に空手もノミネートされており、日本武道そして日本文化への関心が世界の人々に、さらに高まっています。そうした状況のなかで、この武道場の存在は、この地域での重要な拠点となっていくことでしょう」と、新年の挨拶とともにお祝いの言葉を述べた。 

 日本武道には、スポーツとしての競技性がある一方、その根底に流れる精神性をもっとも尊ぶ。礼儀作法を優先し、勝ち負けだけではなく、互いに切磋琢磨するなかで優しさを育む。そんな精神性が人種を超えて理解を深めていることは、この地域に数ある武道場の実態が物語っている。そこには肌の色も言語も無関係に『組み合う姿』がある。

 

万感の思いを込めてテープカットを

   長年の念願であった武道場が完成するまでの間、苦労をかけた関係者へ、日系文化センター・博物館理事長のキャシー槙原さんは、「設計をお願いしたケン竹内さん、プロジェクトマネージャーのサム山本さん、厳しい予算の折衝、ほんとうに大変でしたね。そして、この計画を発案し、提案し、自らドネーションまでしてくれた日系センター理事の五明(ごみょう)明子さん、完成までこぎつけることができて、ほんとうによかったですね」と、それぞれの方へねぎらいと感謝の言葉を述べた。 

 発案者の五明明子さんは、「サム山本さん、ケン竹内さん、そして、当館事務局長のロジャー・レミレーさん、皆さんが力を出し合って完成していただいたことにお礼申し上げます。また、合気道バンクーバー祥門会代表の清田勝さんには、武道場で使用する畳の無償貸与や道場内の柱に安全のためのカバーを巻く作業などを自らやっていただくなど、ご協力に感謝申し上げます」と、今日の日を迎えるまでの道程を振り返りつつ、感慨もひとしおという面持ちであった。

   武道場の入り口を見上げると、そこには堂々たる門標が掲げられている。建友会寄贈の分厚い無垢板(むくいた)に、書道家の紫苑(本名・藤木房子)さんが揮毫。

 日系センターボランティアの海老澤彰さんが彫刻し仕上げたものだ。 

 この武道場は、日系センター1階にあった倉庫を改装したもの。武道ばかりではなくヨガやシニア体操、子どもたちを対象にしたイベントなどの使用も計画している。畳敷きのスペースは、風情ある趣もあり、かつてない使われかたも発案されるだろう。

   理事の五明明子さんは、「私たちが現在、この地に差別もなく暮らせるのは日系一世、二世の先輩の方々のたゆまぬご努力があってこそ。そのご恩に報いるためにも、また、日本文化の真髄をさらに多くの地域の人々に知っていただくためにも、この武道場を活かしていきたい」と抱負を語っていた。                  

(取材 笹川 守) 

 

テープカットをする(左から)ケン竹内さん(建築家)、キャシー槙原さん(日系文化センター・博物館理事長)、在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏、五明明子さん(理事)、サム山本さん(プロジェクトマネージャー)

 

合気道の模範演技に先立ち挨拶する清田勝さん 

 

感慨無量の五明明子さん

 

祝辞を述べる在バンクーバー日本国総領事館・岡田誠司総領事

 

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