秋の気配も深まった10月10日、11日の週末、チャイナタウンのDr. Sun Yat-Sen Classical Chinese Garden(中山公園)で 、バンクーバー生け花協会 (VIA) が展示会を開催。中国庭園と日本の生け花のコラボレーションで、訪れた人の目を楽しませた。

 

中庭に展示された白樺のスタンドではオレンジのひまわりが鮮やか

 

都会のオアシス

  チャイナタウンの中で、都会のオアシスとも呼べる中山公園。両日ともあいにく雨になったものの、案内役の説明に耳を傾ける旅行者のグループが、みずみずしく鮮やかに映し出された緑の庭を鑑賞していた。

 調度品や装飾品、絵画が飾られた個室、池に通じる中庭や吹き抜けなど、園内のところどころに展示された生け花。庭園の中ほどでは雨の中、フローレンスさんが大がかりな作品の仕上げに取り組んでいた。

 香港出身のフローレンスさんは、生け花とともに1985年から日本語も習っている。「自然の中では花が生き生きとします」と、オレンジ色のバード・オブ・パラダイスとひまわりを白樺のスタンド上に生けていた。

 廊下の吹き抜けに作品を展示したグリータ・コス先生は「草月流には、すべてのものが花材として使用できるという考え方があります。今回はきみどり色の風船唐綿(ミルク・ウィード)の実とオレンジ色のひまわりに、自然にカーブした枝を合わせました」とのこと。

 

生け花の実演

 VIAは1965年に結成され、今年5月には50周年記念展示会が開かれたばかり。今回は、池坊、草月流、華道すみの3流派の有志による作品が展示された。

 初日の午後、セシリー・チャング先生によるデモンストレーションが始まると、庭園を散策していた観光客らが集まってきた。

 チャング先生は30年前、台湾で池坊の教室に通い始め、世界共通の資格を取得したことから、カナダに移住後も指導を続けることができたという。

 まず、池坊が550余年の歴史を持つことを伝えた上で、1、2または3種類の材料を使う生花(しょうか)、5種類以上の材料を用いる伝統的な立花(りっか)、自由花(フリースタイル)があることを説明し、茎が曲線になるようしごきながら「マッサージしているんですよ」などと話して、菊やススキなど秋の草花を使って実演した。

 「フラワーアレンジメントが大好き。特に日本のものは情緒があって素敵です」という見学者のリンダさんは、剣山入り花瓶を見せてもらうなど、道具にも興味を示していた。  

 

美と安らぎ

 「生け花展は今年で6年めを迎えました。中国庭園に来て日本の生け花を見られると、お客さまにも大変好評です」と、中山公園マーケティング・コミュニケーション担当のカトリーナ・ニューゲンさん。

 「自然界との接点を持つ生け花は、日常生活にもよく調和します。生けていく段階で平和な気持ちになるのも、安らぎです。たくさんの人にその素晴らしさ、日本伝統の美を広めていきたいと思います」とチャング先生は話している。

 VIAは11月7、8日にマンダビル・ガーデンワークス(バーナビー)での菊展に参加予定。

詳しくはwww.vancouver-ikebana.caまで。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

廊下の吹き抜けに飾られた風船唐綿(ミルク・ウィード)の実とひまわり

木とピンクのバラ。しなやかな枝が描く線は、まるで月のよう

通路に展示されたフロアーサイズの作品

生け花の説明と実演をしたセシリー・チャング先生。花の組み合わせだけでなく、花や茎の線が大切だと説明した

 

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