持続可能なサーモン養殖のために

BCサーモン・ファーマーズ・アソシエーション(BCSFA)が持続可能なサーモン養殖を目指す報告書「サステイナビリティ・プログレス・リポート」を発表。これまでのサーモン養殖の問題点と改善を中心に、今後の展望も合わせて報告した。 報告会は10月27日、バンクーバー市内のホテルで行われた。26日から29日まで開催されたグローバル・アクアカルシャラル・アライアンス(GOAL)会議の一環で、報告会場には多くの関係者が訪れていた。会議には水産養殖関係者、小売業者、フード関連関係者、研究者、NGO、政府関係者など、世界中から約400人が参加。同会議がカナダで行われるのは今回が始めて。 BCSFAの持続可能なサーモン養殖の要点は、環境的持続性、社会的持続性、経済的持続性の3点。特に、環境的持続性の説明に多くの時間が割かれた。

 

会場の様子(10月27日フォーシーズンズ・バンクーバー)

 

大きく変化したサーモン養殖の環境整備

 ブリティッシュ・コロンビア州のサーモン養殖は約30年前に始まり、最近10年で大きく変化したとBCSFAエクゼクティブ・ディレクターのジェレミー・ダン氏が語った。特にサーモン養殖を取り巻く環境への取り組みは顕著で、数字にも大きく表れている。

 報告では、抗生物質の使用量、飼料含有物、管理体制、天然サーモンの保護などが説明された。

 抗生物質の使用量は最近10年で目覚ましく減少、2014年では1トンの生産量に対して約50グラムとなっている。使用目的も健康状態を維持するためのもので、獣医に処方箋されたものに限っている。この数字は10年前の350グラムの約7分の1となり、他の家畜への使用量と比べても3分の1以下と低い数字となっている。しかし世界的にはさらに減少する傾向であり、今後は世界レベルへと、さらに減少させていくと説明した。

 その他、飼料に含まれる脂質やタンパク質の供給源を、これまで半分以上を占めていた海産性のものから、ベジタブルを中心に動物性を増やしたものに変化させていると報告した。現在使用している飼料に含まれる魚肉、魚脂は18パーセント以下となっている。ただ、サーモンの特長であるオメガ‐3s、特にEPAやDHAの量を一定レベルに保つ必要性も説明した。

 BC州で養殖されているサーモンのほとんどはアトランティックサーモンで、天然のパシフィックサーモンとは種類を異にする。そのため、養殖サーモンが逃げ出し、他の環境に影響を与えないために管理体制を徹底しているとも説明した。

 

社会的、経済的持続性の重要性

 社会的持続性としては、先住民族との協力をあげた。現在BC州のサーモン養殖の78パーセントは先住民族との協力関係で成り立っている。現地コミュニティとの協力は欠かせず、社会的持続性はそのまま雇用やサーモンファームツアーなど経済的持続性にもつながっている。

 サーモン養殖がBC州の重要な産業の一つであることは周知の事実。BC州海産物生産額では約60パーセントを占めている。BC州海産物輸出量の約30パーセントが養殖サーモンで、アメリカへの輸出海産物の60パーセントを占めている。BC州養殖サーモンの輸出先としては、85パーセントがアメリカで、15パーセントがアジアとなっている。

 BC州で生み出す雇用は約5000人、BC州経済への貢献は年間11億ドルを超えると報告している。

 

BCサーモン・ファーマーズ・アソシエーション(BCSFA)

 BCSFAはサーモン水産業に関わる事柄全体を扱う機関で、養殖業者だけでなく、養殖サーモンを扱う企業なども参加している。現在は41の企業がメンバーとなっている。

 ビジネスとしてのつながりだけでなく、コミュニティへの貢献や関連する研究などにも力を入れ、2014年には150万ドルをかけ海洋環境リサーチプログラムを創設、養殖サーモンだけでなく天然サーモンも含めた研究を行う。

 持続性に関する報告書を発表したのは今回が初めて。報告書は、同機関HPから閲覧できる。

http://bcsalmonfarmers.ca/

(取材 三島直美)

 

 

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