東京都世田谷区の中学生親善訪問団が、姉妹都市であるウィニペグ市を訪れ、約2週間のホームステイを体験した。 9月17日にまずバンクーバーに到着した一行は、スコーミッシュにあるチェカムスセンター(ノースバンクーバー教育委員会よりリステルカナダが経営を委託)で、2泊3日の自然体験学習に参加した。

 

リステルホテルでの歓迎式。来賓のノースバンクーバー市教育委員会ピアス・ライアン副委員長(左端)、在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏(右から2番目)。(後列左)リステルカナダ役員のジョン・ニコルソン氏、(左から4番目)世田谷区立東深沢中学校松平昭二校長、(左から5番目)リステルカナダ副社長の上遠野和彦氏

 

1971年に始まった 中学生交流事業

 世田谷区とウィニペグ市は1960年の児童生徒の絵画の交換をきっかけとして友好を深め、1970年10月に姉妹都市提携を結んだ。その翌年、世田谷区から中学生の親善訪問団がウィニペグ市を訪れ、その後1年おきに区内の中学生の派遣とウィニペグ市から生徒の受け入れを行っている。これまでの訪問先にはバンフ、カルガリー観光が入っていたが、今回は旅行の手配先である日本旅行の提案により、チェカムスセンターでの体験学習を提案し実施に至ったという。

 カナダに到着したばかりの訪問団を歓迎するレセプションが、在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏を招いて、ダウンタウンにあるリステルホテルで行われた。開会の言葉として、リステルカナダ副社長の上遠野和彦氏が、この体験学習を通して自然環境を守るためにどんなことができるか考えるきっかけになればと期待を述べた。

 来賓の岡田総領事は自分自身が高校在学中、アメリカに交換留学で滞在した際、言葉、生活習慣、考え方など日本と大きく違っていることに気がついたが、そうした違いを知ることは重要なことだと思うと述べた。そして日本国外に出てみると、自分が日本のことを意外と知らないということにも気がつく。これもまたとても大切なことであるとし、今回のカナダ訪問で「日本と外国の違いを知る」、「日本のことで知らないことがたくさんある」という点に気がついてほしいと語った。そして、このカナダ訪問がこれから先の人生にとって貴重な経験になるよう、有意義に過ごしてほしいと締めくくった。

 また、ノースバンクーバー市教育委員会のピアス・ライアン副委員長が、チェカムスセンター内にある伝統的なビッグハウスでは先住民の豊かな文化を学ぶことができることを説明。若い世代が人種や文化の多様性を知り、尊重する大切さを知ることの重要性を語った。訪問団からは、団長である世田谷区立東深沢中学校の松平昭二校長と生徒の代表者が、カナダでの滞在を楽しみにしていると挨拶した。閉会の挨拶をした、リステルカナダ役員のジョン・ニコルソン氏は、チェカムスセンター周辺ではブラックベアを見ることもあるかもしれないが、「熊にはエサをあげないように」とクギを刺し、場を和ませていた。カナダに到着したばかりの訪問団の一行は、歓迎式のすぐ後にスコーミッシュへと出発した。  

カナダの大自然に触れる 

 今回の体験学習に参加したのは、世田谷区の中学生16人、引率教員3人、引率の世田谷区職員が1人の合計20人だ。到着翌日の18日は、さまざまな活動を体験。

 まず、チェカムスセンターの鮭ふ化場に生息するコーホー、チャム、ピンクサーモンのライフサイクルと、鮭が地元のエコシステムにどのように関わっているかなどを学ぶフィールドスタディがあった。次に、北米の温帯雨林の生物の多様性を森の中を探検しながら学ぶ散策。地域独特の木々や植物を知り、人間と自然の関連性を学んだ。

 生徒たちからは「自然が私たちの生活にもたらすことの大切さを学んだ」、「カナダの大自然を五感を使って学べて、自然の素晴らしさを感じた」、「野生の熊と鹿の親子を間近で見ることができ、日本ではできない経験ができた」といった感想が聞かれた。その後は、いくつかのグループに分かれてのエコレース。特別な木や、森に隠されているものを探したり、石や草花を使って何かを作ったりするゲームをグループで協力しながら行った。「チームで助け合うこと、コミュニケーションの大切さを楽しみながら学べた」(生徒の感想)。さらに夜には、サリッシュ語族の伝統的な建物ビッグハウスで、スコーミッシュ族の長老たちから先住民の文化と知恵を学んだ。昔使われていた石、木、骨などを使った道具を再現して使い方を習ったり、たき火で調理をしたりと体験型の学習の時間を生徒たちも楽しんだ。

 また先生方からは次のようなコメントをもらった。「ウィニペグ市でホームステイを始める前に、英語でコミュニケーションをとる良い練習ができた。特に、チームビルディングやプロジェクトアドベンチャーのレクリエーションは大変有意義な経験だった」、「どのプログラムでも生徒達が心身ともに開放されているのが分かり、とても嬉しい」、「森林セラピーを本場で行うことの素晴らしさを生徒達に体験させてあげることができ良かった」。

 翌19日には、ウィニペグ市に向かって出発。短いながらも貴重な体験が凝縮された研修となったようだ。

(取材 大島多紀子/取材協力・写真提供 リステルカナダ)

 

最終日の閉会式。Director of Educationのコナー・マクムラン氏(前列中央)は、サーモンフィールドスタディーの引率をした。この研修中の食事を担当したシェフのウェードさん(後列中央)はウィニペグの出身、その隣はプログラムサポートスタッフのアーニカさん

アウトドアスクール校長のケイトさん(右端)が引率する森のハイキング。五感のうち「聴覚」で森を感じるためのトレーニング中

先住民の知恵や文化を学ぶ時間では、伝統的な工芸品を作る体験も

鮭について学ぶフィールドスタディーでは、長靴をはいて水の中に入り川の様子を実際に見て確かめていた

アーチェリーの体験をしたりゲームをしたりとアクティビティもさまざま

 

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