サラ・デイヴィス・ビュクナー氏を迎えピアノ三昧

秋晴れに恵まれた9月13日、バーナビーのマイケルJフォックス・シアターでバンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ(VMO)が第13期シーズン開幕コンサートを開いた。今回のテーマはピアノ。UBC音楽学部准教授でピアニストのサラ・デイヴィス・ビュクナー氏がピアノの魅力をたっぷりと聴かせてくれた。

 

サラ・デイヴィス・ビュクナー氏(左)とモニカ・ハンさんによる『動物の謝肉祭』(撮影:King Tam)

 

『動物の謝肉祭』

  サラ・デイヴィス・ビュクナー氏と教え子のモニカ・ハンさんによる共演は、サン=サーンスの組曲『動物の謝肉祭』。いろいろな動物がテーマで、中でもミステリアスな雰囲気の『水族館』や美しい旋律の『白鳥』はあまりにも有名。『水族館』では、ピアノのアルペジオで水が流れ落ちる音をみごとに表現した。

 モニカさんはUBCを卒業し、現在はモントリオール大学でベトナム出身のピアニスト、ダン・タイ・ソン先生に師事している。

 

3台のピアノが語り合う

 休憩後、ステージに向き合うようにして並べられた3台のコンサート・グランドピアノ。この日の聴きどころはビュクナー氏、モニカさんとライアン・ジュウくん(12)によるモーツアルト『ピアノ協奏曲第7番』(3台のピアノのための協奏曲ヘ長調 K.242)。第1楽章アレグロを楽しそうに、第2楽章アダージョを美しく演奏した。

 「世代の異なる3人のピアニストの共演は、ケン・シェの提案でした。弾き手も聴き手も楽しめる親近感のある音楽は、モーツァルトだからこそ書けた作品だと思います」とビュクナー氏。まるでピアノが会話しあうような演奏に、会場から大きな拍手が沸いた。

 

若手演奏家にチャンスを

 今回出演したライアンくんは4歳からピアノを始め、今年度のカナダ音楽コンクール優勝、2014年度バンクーバー音楽アカデミー・州大会優勝、2014年度バーナビーClefコンクールに最年少で優勝。2013年にクレッシェンド国際コンクール・シニア部門で1位となりカーネギーホールでのデビューも果たした。

 「モニカは将来性もあり、ソン先生の元で大きく成長することでしょう。ライアンはやる気もあり聡明な少年です。次の世代の演奏家として期待しています。このふたりを導いたサラさんは団員にも好評で、オーケストラも素晴らしい演奏ができました」とケン・シェ氏。

 13年めを迎えたVMOは、今後も若手演奏家にプロと同じような設定でオーケストラと演奏するチャンスを提供していくという。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

サラ・デイヴィス・ビュクナー (Dr. Sara Davis Buechner)

1959年生まれ、米国メリーランド州ボルティモア出身。ジュリアード音楽院を経て大学院博士課程終了。エリザベート王妃国際コンクール、リーズ国際ピアノコンクールをはじめ、ザルツブルク、シドニー、ウィーンなど多くの国際ピアノコンクールで受賞ほか、1984年のジーナ・バックアウワー国際コンクールで優勝。1986年、チャイコフスキー国際ピアノコンクールで3位入賞。世界各地でのコンサート活動ほかマスタークラスも行っている。2003年よりUBC音楽学部准教授。

 

 

モーツァルト『ピアノ協奏曲第7番』(3台のピアノのための協奏曲 ヘ長調 K.242)を弾いたサラ・デイヴィス・ビュクナー氏とライアン・ジュウくん、モニカ・ハンさん(撮影:King Tam)

VMO音楽監督・首席指揮者ケン・シェ氏

ビュクナー氏は1995年以来、熱烈な阪神タイガース・ファン。同じく阪神タイガースファンのケン・シェ氏とは話題に尽きることはないという (撮影:King Tam)

 

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