バンクーバー朝日軍の栄誉を称えて
晴天の9月6日、バンクーバー・ナナイモパークで伝説の日系野球チーム「朝日軍」の栄誉を称えた記念試合が行われた。試合は新朝日の活躍の場であると同時に、朝日軍の歴史を振り返り、その歴史を引き継ごうと新朝日を支える人々が一堂に会する場でもあった。
15〜18歳の朝日ミジェットと朝日アダルトチーム(写真提供 Janet Cheeさん)
強さを見せた新朝日
昨年10月に日系少年野球チーム「バンクーバー新朝日」が結成されてから約1年。積極的な運営のもと、今年3月には日本遠征という大きな行事も無事こなしてきた。現在は総メンバー数80人を数え、年齢別にミニ、ピーウィー、バンタム、ミジェットの4つのチームに分かれて、この日の試合に向けて7月末から日曜日ごとに練習してきた。
試合は午前9時に開始。13、14歳で編成された朝日バンタムはホワイトロックバンタムに6対3で勝利。次に9、10歳のミニ朝日がウエストバンクーバーを7対4で負かした。午後2時からの試合では朝日ピーウィー(11、12歳)がホワイトロックピーウィーに15対0と圧勝。朝日バンタムのキャッチャーを務めるヒロ・ヤマモト君は「チームワークを大事に練習をしてきて、試合ではそれを生かすことができた」と語る。
朝日軍の伝統を未来へつなぐ球児と士気を盛り上げる朝日アダルトチーム
午後4時を回った球場に、赤いユニフォームの朝日ミジェット、向かいには対戦する黒いユニフォームの朝日アダルトチームが並び、朝日軍を称えるセレモニーが行われた。挨拶に立った岡田誠司在バンクーバー日本国総領事は「公文書をひもとく中で朝日軍の名前を何度も目にした」と語り、日系人の誇りを引き継ぐ新朝日に声援を送った。次にアダルトチームのゼネラルマネージャー兼アシスタントコーチの小川学さんが「子供たちが将来黒いジャージに憧れて、一生懸命練習する状態を作れるように今後もがんばっていきます」と挨拶。新朝日の発起人の一人、エミコ・アンドウさんも挨拶に立ち、朝日の活動を支えている選手の家族やボランティアの尽力を称えた。さらにセレモニーでは日系博物館で朝日軍の展示を準備運営したグレース・トンプソンさんが朝日軍の歴史を紹介。小柄な体格と不公平な審判という逆境の中、戦略で立ち向かい「ブレインボール(頭脳野球)」と評されたこと、スポーツマンシップを貫く姿勢に野球ファンから人気を博していたことを強調した。その後、エリカ・トミタ・クワンさんの国歌斉唱に続き、岡田総領事がマウンドに立ち始球式。見事に決まった投球に拍手がわき起こった。
迎えた朝日ミジェットとアダルトチームとの試合。アダルトチームは全員が日本で野球の経験がある20代から30代の面々で、元甲子園球児もメンバーとなっている。アダルトチームのベンチからの威勢のいいかけ声に活気づく球場で、選手たちは精一杯プレーに臨んだ。競り合いの結果、5対7でアダルトチームが勝利した。「ものすごく速い投球だったけれど、思いきりバットが振れた」と朝日ミジェットの藤江宏大君。そんな選手たちの姿は、澄んだ青空と共に応援に駆けつけた人々の目にさわやかに映ったことだろう。
(取材 平野香利)
13、14歳の朝日バンタム (写真提供 Janet Cheeさん)
11、12歳の朝日ピーウィー(写真提供 Janet Cheeさん)
9、10歳のミニ朝日(モスキート)(写真提供 Canadian Nikkei Youth Baseball Club)
朝日ミジェットとアダルトチーム、試合前の挨拶を元気よく
グラウンドに気持ちのいい球音が響いた(写真提供 Janet Cheeさん)
アダルトチームと競り合った朝日ミジェット
始球式に臨んだ岡田誠司在バンクーバー日本国総領事とキャッチャーのアタル・ヤマグチ君
ソウルフルに国歌を歌い上げたエリカ・トミタ・クワンさん(写真提供 Janet Cheeさん)