なでしこジャパン 決勝ラウンド進出 !!

 

第1戦は23日BCプレースで

早々と決勝ラウンド進出が決定した。6月12日、カメルーンに勝利し、2連勝で勝ち点6を獲得。前大会の女王は、W杯初出場国に苦戦しながらも、順当に勝ち上がった。 グループCを1位通過したなでしこの決勝ラウンド1回戦は、23日、BCプレースで行われる。

 

カメルーン戦、試合前の集合写真

 

カメルーンにも辛勝

 予想以上の辛勝だった。勢いのあるカメルーンのフォワードが容赦なく日本のゴールを狙ったが、日本は前半の2点を守り切った。

 前半は上々の滑り出しだった。試合開始からわずか6分。MF(ミッドフィールダー)川澄からのパスを、相手ディフェンスがノーマークのDF(ディフェンダー)鮫島が余裕のシュートを決め、1点目。その10分後には、MF宮間のパスを右ポールのギリギリのところで待っていたFW(フォワード)菅澤がヘディングで合わせ、早々と2点を先取した。

 しかしその後は、ゴールを狙えるシュートすらない状態だった。中盤でボールを回し、チャンスを作るも決定的なシュートは一本もなかった。

 「苦しい展開になりましたけど」と宮間。「勝ち点3を取れたのが一番大きいかと思います」と語った。

 「今日の目標は勝ち点3を取ることだったので、その目標を達成したのは良かったんですけど」と、この日はMF阪口に代わって途中出場だったMF澤が語ったように、どの選手もこの日の勝利で決勝トーナメント進出が決定したことよりも、試合内容への反省点を口にした。FW大儀見は「90分含めて、そこまでいい攻撃ができなかったという感じ」と言い、先制点を決めたDF鮫島は「後半はスイス戦同様、チーム全体で押されるシーンが多くて」と、2試合連続でW杯初出場国に同じような試合展開になったことを反省した。

 それでも勝ち切るのが、なでしこの強さ。カメルーンのヌガチュ監督は、「日本は世界でもトップのディフェンス力を持つチームであることは分かっていた」と、パワフルな攻撃力を持つカメルーンのフォワード陣が最後まで崩しきれなかった日本のディフェンス力を称賛した。

 前日の記者会見で、「世界一のチームと対戦できるなんて夢みたいだ」と語ったヌガチュ監督。「選手たちのプレーには満足しているが、勝ち点が取れなかったのは残念だ」としながらも、「2失点した後でも選手たちはポジティブにプレーし、アフリカンサッカーの強さを世界に示せたと思う」とアフリカチームの潜在能力を自負した。

 「最後の最後、苦しいながら守り切った。結果オーライで終わって良かった」と佐々木監督は笑顔を見せた。

美しさが強さの秘訣

 前半の15分。「なでしこ」は、どこまでも美しかった。11選手全員が、全選手の動きを把握し、棋士が何百手も先を読み切るように、ボールが動くたびに、味方の選手と相手の選手の動きを読み、自在にピッチを駆け回った。

 鮫島の先制点も、菅澤の2点目も、ゴールまでの全ての動きが美しかった。読み通り、作戦通りの2点だった。佐々木監督も宇津木、鮫島、川澄の起用を「ポイントとしては良かった」と振り返った。

 先制点は、「右サイドを崩してくれて、触れば入るだけのボールだったので」と鮫島。試合前から味方が右サイドを崩していたのでチャンスはあると思っていた。「しっかり決められてよかった」と何事もないような口調で語った。

 2点目を入れたW杯初得点の菅澤は、夢の舞台で得点できて「とてもうれしかった」と笑顔。宮間とは「自分の感覚的には(目が合ったような)感じがあった」という。「ドンピシャにボールが来たんでそこに決めるだけでした」。

 前日の試合前記者会見で、勝つという結果同様に試合内容、「なでしこ」らしいスタイルのサッカーをすることも重要なのかとの質問があった。「なでしこ」らしいサッカーというのは、まさにこの前半の15分のことだろう。アトラクティブで、エンターテイニングなサッカー。そのスタイルは、機能的で美しくて強い。2011年大会で日本が優勝し、世界の女子サッカーを変えたサッカーだ。

 「今は世界の女子サッカーのレベルが上がって、日本も勝つのが必死」と佐々木監督は笑ったが、美しければ美しいほどその強さが際立つ「なでしこ」スタイルを、今大会もファンは期待している。

なでしこ決勝ラウンド第1戦はBCプレース

 16日のエクアドル戦に1‐0と苦戦しながらもなんとか勝利し、3連勝で勝ち点9を獲得した日本は、グループCを1位通過。決勝トーナメント第1戦は、23日バンクーバーのBCプレースでの試合となる。キックオフは19時。W杯連覇に向けて、いよいよ厳しい戦いが本格的に始まる。

日本代表結果

12日 日本 2‐1 カメルーン BCプレース(31,441)

16日 日本 1‐0 エクアドル ウィニペグ(14,522)

カナダも一次リーグ突破

 グループAのカナダは、中国、ニュージーランド、オランダと対戦し、厳しい試合ながらもなんとか1次リーグを1位で突破、決勝トーナメントに進出した。

 カナダは中国戦では、試合終了間際のPK(ペナルティキック)で唯一の得点を挙げ、勝利。ニュージーランドには、相手のPKをしのぐなど、厳しい戦いが続いたものの、なんとか0‐0の引き分けに持ち込んだ。オランダ戦では、W杯初出場国相手に苦しい戦いを強いられ1‐1。それでも、中国とニュージーランドが引き分けたため、グループAで1位となった。

 試合後、「今日のオランダはかなり良かった」とハードマン監督。しかしカナダも若手とベテランがうまく機能したと語り、「勝ち点5が取れて、これで西(バンクーバー)に向かえる。これが初めからの計画だった」と安堵の表情を見せた。地元開催で優勝を狙うカナダにとって、1次リーグで敗退するわけにはいかない意地を見せた。

 決勝ラウンド第1戦は、21日BCプレース。バンクーバーで5万人のファンが待っている。

 グループDのアメリカは16日、ナイジェリアと対戦し、1‐0で勝利。グループ1位が決まった。この日52000人のほぼアメリカファンで埋まったBCプレースは「U・S・A」の大合唱がこだましていた。

 

この日は先発のFW菅澤。17分にMF宮間からのパスをヘディングシュート、日本に2点目をもたらした

FWエンガナムットのあわやゴールのシュートをなんとか切り抜ける

MF阪口に代わって64分にMF澤が途中出場。会場からは大きな歓声が沸き起こった

DF鮫島のゴールが決まり先制点を喜ぶなでしこ

エクアドル戦でハットトリックを決めたカメルーンFWエンガナムット

この日先発出場したDF近賀

カメルーン戦の守護神は海堀。強力なFW陣に立ち向かった

カメルーンFWヌゴノマニ(#9)と衝突して座り込むDF岩清水

この日、初先発だったDF鮫島

2試合連続でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたキャプテンMF宮間

スピードと突破力のあるカメルーンフォワードを抑えるMF阪口

この日は途中交代で出場したMF大野

あやうくGKと接触しそうになり、うまくよけるFW大儀見

全員で堅守態勢

チームメートに指示を出すMF宮間

 

(取材 三島直美 Photo by Sam Maruyama)

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。