一般参加の最高位、6位入賞~原口孝徳さん

 

5月3日に開催されたBMOバンクーバーマラソンで、一般参加選手の中では最高位の6位入賞を果たし、2時間28分52秒で自己ベストも更新した原口孝徳さん(25)。バンクーバー在住で、ランニングをこよなく愛する原口さんに話を聞いた。

 

Farewell Runのあと記念撮影する原口さんと友人たち 5月9日、バンクーバー市内で(原口さん提供)

 

 佐賀県出身で大学時代は東京農大の駅伝部に所属、大学を卒業後、2013年3月に農業研修のためハワイのマウイ島へ渡った。同年9月に初めて出場したフルマラソンで優勝。現地の人たちや他の外国選手に祝福された経験がもとで海外のマラソンに興味を持ち、英語も本格的に勉強しようと思ったという。

 その後、新たな出発点を探している時に、カナダのワーキングホリデー制度の利用を考え、寒さの厳しい東部に比べ温暖でランニング環境に適したバンクーバーを選び、2014年9月にやって来た。

 暮らし始めてからほどなくして参加したイーストサイドテンケイ(10キロマラソン)で学生時代の競技感覚がよみがえり、6位入賞したことでバンクーバーマラソンへの出場を決めた。その後も2015年2月にあったファーストハーフバンクーバーマラソンで3位に入り、他のレースにもエリート参加枠という特別措置で出られるようになった。

 学生時代は大学の組織的なサポートがあったが今はひとりなので、大会に出場した時はウォーミングアップ中の荷物管理も自分でやらなければならない。今はスポーツ用品店やラーメン屋で働きながら仕事の前や休日に練習をしているが、個人でやっていくこのスタイルが自分には合っているという。

 マラソンの魅力について原口さんは「皆で一斉にヨーイドンでスタートして、終わればタイムで結果がはっきり出るところでしょうか。いろいろな国の違ったタイプの走りをする選手と一緒にレースをすることは面白いです」。またゴールした後にみんなで祝福し合い、情報交換することも有意義という。マラソンで知り合った仲間と次のレースで再会し交流を深めることも楽しみで、これからは競技だけでなくコミュニティグループにも参加したいと語る。

 バンクーバーについては、「お互いを気にせず、人にはやさしいところが好きです。食べ物もさまざまな国の食材があって美味しいし、日本食にも困りません。気候も夏はエアコン要らずの気温と湿度で、日没が遅いのもいいですね。また公園が大きく数もたくさんあり、足に優しいトレールコースも多いので、走る環境に適しています」と話す。

 そんな原口さんの趣味は、旅。

 実はビザの関係で5月にカナダを離れ、日本へ帰国するという。日本滞在の間はアジアの大会に出て、7月からオーストラリアのシドニーへ競技の参加とランニング事情を学ぶために旅立つ予定らしい。

 渡豪したあと11月にある、ニュージーランドのオークランドマラソンに出場して、東京マラソンのエリート参加枠タイムの2時間21分を切るのが当面の目標。そのために走りの練習量を1カ月に600キロまで増やすことも考えている。

 カナダと同様、ランニング環境が整ったオーストラリアでは競技を続ける一方、トップ選手をサポートする仕事についても学びたいと話す。

 また日本でけがをして競技生活をあきらめているランニング仲間には、ワーキングホリデーを使って海外でも活躍できることを知ってもらいたいと助言する。  これからも「走る楽しさは忘れたくない」という原口さん。

 バンクーバーマラソンの優勝も目標で、これからの練習の結果次第では、来年以降も出場するつもりだ。

 マラソンが縁でつながった人脈や経験を活かしながら、ゴールを目指して走る原口さんの旅はまだ終わらない。

 

インタビューに応える原口孝徳さん 5月10日、スタンレーパークで

 

(取材 古川透)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。