Continuity & Connection
「繋ぐ〜多次元を〜」

 

平成26年度日本国文化庁文化交流使に任命された、金春流能楽師の山井綱雄さんによる公演が2月28日、バンクーバー・アカデミー・オブ・ミュージックのKoerner Recital Hallにて行われた。1400年という、能楽でも最古の歴史を持つ金春流。その伝統的な能の舞、謡、囃子がピアノと組み合わされるという新しい試みに、会場を埋めた観客は魅了された。

 

 背景の書には「秘すれば花」という世阿弥の言葉が書かれている。日本の書家、石飛博光(いしとびはっこう)さんの作品

 

能楽の素晴らしさを堪能した一夜

 トモエアーツのコリーン・ランキさんは、「(在バンクーバー)日本国総領事館と共催でこの公演を開催できることを嬉しく思っています」とし、スポンサー始め観客に謝辞を述べた。続いて、羽織袴姿の在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏が挨拶の中で、「今年は、バンクーバーと横浜市、バーナビーと北海道の釧路市がそれぞれ姉妹都市提携50周年を迎えます。本日出演する山井綱雄さんは横浜市在住、ジャズピアニストの木原健太郎さんは釧路出身という偶然が重なりました」と語った。

 今回の演目は5曲。それぞれの曲の簡単な説明のあと、最初から最後まで途切れることのない約1時間半の上演だった。シテの山井さん、地謡(じうたい)の高橋忍さん、辻井八郎さんによる、「翁」は能の最古の曲とされる。そして、囃子方(小鼓、大鼓、太鼓、笛)が加わった「高砂」、囃子だけによる「盤渉楽(ばんしきがく)」へと続く。西洋の音楽風にいうならばインストルメンタルであるこの曲は、抑え気味に始まってだんだんとテンポが上がって盛り上がっていく。続いて、山井さんが天女の装束を身につけ、能面をつける動作が演目の一部として披露された。断続的で静かなピアノの音が、舞台へのぞむ前の緊張感を表現しているかのようで、観客も息をつめて見つめている様子が感じられた。「羽衣」では、天女が羽衣を返してもらったお礼に、国土に宝を降らせましょうと願いを込めて舞うという優美な場面が演じられた。

 最後の「きずな」は、山井さんと木原さんによるオリジナルコラボ曲。一人の女性が孤独の象徴として登場、『人とのつながりがなくては、人は生きていけない』ということを表現しているという。囃子や謡もピアノ演奏と意外にも合っていて、今までに聞いたことのない独特な世界を作り出していた。能は伝統芸能であるのと同時に、無限の可能性を秘めているのかもしれないと感じた。

 

能の曲「羽衣」で、天女の能面をつける山井綱雄さん

 

「きずな」の演奏中、ピアニストの木原健太郎さんと山井綱雄さん

 

ワークショップも開催

 3月7日午後8時から、UBC Asian Centre Auditorium(1871 West Mall, Vancouver)で、無料のデモンストレーションが行われる。バンクーバー・インターカルチャラル・オーケストラの作曲家ファシードさんによるオペラ「Courting Komachi」が演奏される。能の曲である「通小町(かよいこまち)」を題材としており、山井さんによる能と西洋音楽とのコラボという画期的な試みとなる。

 3月8日〜12日まで5日間の本格的なワークショップもある。午後6時から9時まで、SFU Woodwards Goldcorp Centre for the Arts(149 W Hastings Street, Vancouver)にて。こちらは参加料が150ドル(税抜き)で限定24人まで。能について学ぶだけでなく、謡と舞の実習もあり、充実した内容となっている。

 

公演後、在バンクーバー日本国領事岡田誠司・寧子ご夫妻(左から4・5番目)らを囲んで記念撮影(写真提供 ルイーズ阿久沢)

 

登録と問い合わせ(英語) トモエアーツ

www.tomoearts.org

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604ー607ー5978

(取材 大島多紀子 写真撮影 中村みゆき)

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。