第45回

糸東流空手道正晃会寒稽古

 

1月17日、バンクーバー市内のイングリッシュ・ベイで、糸東流空手道正晃会、恒例の寒稽古が行われた。今年は45回目となる節目の年。佐藤義晃師範が日本から移住してきた1971年から始めた寒稽古。当初は「ポーラベア寒中水泳」に合わせて始まった。以来、イングリッシュ・ベイでの新年の恒例行事となっている。

 

まずは、瞑想からはじまる寒稽古

 

糸東流は、「君子の拳」と呼ばれ、精神教育に重点を置く。

 糸東流は、沖縄の空手を源流に、開祖の摩文仁賢和(まぶにけんわ)によって日本武道と融和し1934年に大阪で誕生した。『君子の拳』を標榜し、円満な人格の形成、向上を目指して指導してきた。また、技の多彩さ、実践的な空手としても知られ、今や世界各地に道場が開設されている。

 佐藤師範は、東京の糸東流糸洲会で空手を学び、26才の時カナダ・バンクーバーへ移住し、「糸東流空手正晃会」を立ち上げた。45年の間には、多くの門下生が育ち、指導者となっている人も多い。バーナビー市の日系センターの空手クラブとデルタ市のラドナーの空手クラブで指導しているマートン・マモル・ホリタ会長もそのひとり。現在、佐藤師範指導の空手クラブは、BC州内に13カ所開設されている。佐藤師範は、バンクーバー道場のほか、イスラエル、ロシアなど海外25支部で直接指導も行っている。

 

入水前約50分間かけて準備体操と形の練習を繰り返し、体を温める

 

今年は女性の参加者が多かった。

 今にも泣き出しそうな空模様だったが、結局、雨は降らず、寒稽古は大いに盛り上がった。参加者は46人。今年は、女性の参加者が多かったのが印象的だった。また、観客にも女性の姿が目立った。「最近は、女性の関心が高まってきましたね」とは、佐藤師範の話。この日、初めて寒稽古に参加していた、UBC日系女子大学生の琴アンダーセンさん(25才)は、12才から空手を始め、今では黒帯姿も凛々しく、すっかりとりこに。寒稽古の後のランチタイムには仲間との体験談に花を咲かせ、“美容にもいい!”とすてきな笑顔を見せてくれた。

 参加者でもうひとつ特徴的なのが、国際色豊かなこと。まさしく、ここカナダのモザイク国家そのものだ。だが、あいさつは“オス!はい!”であり、掛け声も“イチ、ニー、サン・・・”、技の名前も日本語のまま。また、礼儀や仕草などは、ともすれば日本以上に日本的だ。日本語、日本文化を理解するきっかけは、案外こんなところから始まるのかもしれない。

 練習の門戸は、常に開かれており、気軽に体験、見学ができる。また、期間限定での入門も歓迎という。ワーキングホリデーで徳島県から来加している坂本竜之介さん(26才)も1年限りで練習に通っている。もともと実家が空手道場で、子どもの時から習い始め、現在は4段の腕前。2005年、2006年の高校選抜の団体形チャンピオン。腕が衰えては困ると、糸東流正晃会バンクーバー道場に通っている。

 

左端が佐藤師範。海中から上がった全員がまるで湯上りのようなすがすがしさだ

 

節目の年に、「CANADA日本武道振興会」がスタート。

 昨年の寒稽古のとき、佐藤師範が語っていた「バンクーバー地区にある各種の日本武道の指導者に呼びかけ、『STOP BULLYING』 運動をしようと思います」の言葉が実を結び、空手、少林寺拳法、合気道、柔道、剣道の各指導者が集まり、『CANADA日本武道振興会』としてスタートした。「いじめ問題に取り組みつつ、日本文化への理解を深める運動につなげたい」と熱く語っていた。

 糸東流空手道正晃会へのお問い合わせは This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. まで。

 

むしろ、海中の方が暖かいという

 

 

   

(取材 笹川守)

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