大炊郁子さん

  

アンパンマンにパンダ、見ると思わず顔がほころぶ寿司、それが飾り寿司だ。 「海外に飾り寿司を広めたい」その思い一つで大炊郁子さんはカナダにやってきた。

 

祝の文字になるようにパーツとご飯を合わせていく

 

隣組での飾り寿司クラスの様子

 7月26日、この日は郁子さんによる飾り寿司クラス3回目。参加者の一人、岡本仁志さんの動機は「男を上げようと思って(笑)。ガールフレンドを喜ばせたいと思ったんです。」そして、先日実際に自分で作って彼女にプレゼントしたところ、大変喜び、すぐさまフェイスブックに写真を投稿。たくさんの「いいね!」を受けたそうだ。「パーティに持っていったら大反響で」と笑顔で答えてくれたのは永井美代子さん。そんな喜びを実感している参加者たち、次なる寿司レパートリーを手にしようと真剣に郁子さんの手元を見つめていた。

 

参加者の児玉克子さんに手ほどきする郁子さん。手前の男性は岡本仁志さん

 

きちんとした準備がきれいな形につながる

 アンパンマンを作り終え、「祝」の文字が入った巻き寿司作りに。郁子さんは、幅の長さが5種類のかんぴょうを皆に配った。「この1センチ幅のかんぴょうに2.5センチ幅の海苔を巻き付けてくださいね」これが「祝」の漢字一画一画のパーツとなる。その後、分量を変えて取り分けた寿司飯を海苔付きかんぴょうに順序よくのせていき、「祝」の文字が完成。切り分けてきれいに文字が見えたときの感激はひとしおだ。

 「準備さえおこなえば、後は組み立て工作みたいなんです」と郁子さん。どうやら材料の長さや幅に加えて、米の分量もきちんと計算されているところが、誰でも形よく作れる秘訣のようだ。

 

アンパンマンのピンクの鼻は魚肉ソーセージ

周りにゆかり入りのご飯で色をつけた祝の寿司。しっかりとした出来栄えだ

 

川澄さんの熱意に共感して

 今回使用のマニュアルを考案したのは日本の寿司職人・川澄健さん。郁子さんは川澄さんの主催する飾り寿司教室でコースを受講し、インストラクターの資格を取得。「川澄さんの『飾り寿司の魅力を多くの人に、そして外国の人にも伝えていきたい』という思いに共感して、私がカナダで飾り寿司を広められたらと思い、ワーホリでここに来たんです」

 渡加以前の勤めは不動産会社に勤めていた郁子さん。「会社の上司に、上司の顔のデザインの飾り寿司を作ってプレゼントしたら、とても喜ばれて…」受け取った上司は寿司の画像をパソコンのトップ画面に。同僚たちにもとても受けた。そんな経験がますます飾り寿司作りへの意欲につながったという。

 「教えることで皆さんと交流できることが楽しいですし、皆さんに喜んでいただけるのがうれしいです。来年2月に帰国予定ですが、できるだけ多くの皆さんに伝えていきたいです」すでに隣組のほか、日系センターでも飾り寿司教室を実施。郁子さんの志、飾り寿司の海外普及のプロジェクトは着々と進行中だ。 

 

講師の郁子さんを囲んで上級編もクリアした参加者の皆さん

 

(取材 平野香利)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。