2016年10月27日 第44号

 「私は日本で生まれ育ったので日本語はできますが、英語はまだまだです」これがカナダ歴16年になる私だ。英語は完璧にできなくて当然だと思ってるし、完璧になる必要もないと思っている。21歳まで日本にいたんだから、仕方がないことなのだ。

 だがそう思えるようになるには時間がかかった。日本にいるときは英語圏に数年住んだら英語がペラペラになると思い込んでいたし、周りからも「ペラペラになって当然でしょう」的な期待があった。また日本社会自体、英語教育に熱心なこともあり、私はここに数年もいたら英語なんて完璧に使いこなしているだろうと非現実的かつ傲慢なプレッシャーを自分自身に与えていた。

 だから最初の数年は自分の英語に対するエゴとの戦いだった。ペラペラになっているはずの英語は、それどころか毎回新しい発見ばかり。予想外の展開に焦りつつ、会話の途中に「え? 今なんて言った?」と聞き返されるたびに「日本語訛りの英語をしゃべってるんで通じなかったか…」とへこんだり、相手の言っていることがわからなくても「もう一回言ってください。ゆっくり話してください」と言いたくなかったり、自分の英語と他人の英語を比較したりと、未熟な英語とそんな自分に悶々とする毎日を送っていた。

 だがそんな葛藤に転機が訪れた。渡加2年後、バンクーバーから首都オタワに移ることになった。オタワは川を隔てて対面側にケベック州があることから、ケベック州で生まれ育ったフランス語話者たちがオタワに住んでいたり仕事をしている。そんなフランス系カナダ人たちは、すぐ目の前に英語環境が整っているのに、意外と英語が流ちょうに話せなかったりするのだ。当時は「えっ〜!カナダで育ったのに英語が話せない!? 橋を渡って5分のところはすでに英語圏でもあるんだけど、なんで?」という驚きばかり。同時に、英語を母国語とするカナダ人たちも、橋を隔ててすぐのところにフランス語環境が整っているのだが、かといってフランス語が完璧に使いこなせるかといえば、そういうわけでもない。(もちろん皆が皆そうであると言っているのではないが*1)

 そこで自問自答する。私なんて日本という島国で日本語だけで育ったんだから、カナダに数年住んで学校に行ったり仕事をしただけで、そう簡単に英語がネイティブレベルになるものなのか。そんなわけがないのだ!

 これをきっかけに自分のなかで英語に対する意識が「完璧じゃなくて当然なのかも」に変わっていった。

*1) 2011年度の国勢調査ではカナダ人口の17.5%が英語とフランス語のバイリンガルであると発表されている。

 


■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。 
ブログ: http://makoogura.blog.fc2.com 

 

 

 

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