2016年9月22日 第39号

 9月になり新学期が始まった。我が家ではここ一週間、号泣で朝が始まり号泣で夜が終わる。「がっこういやだ〜。ママとずっといっしょにいたいの〜」と幼稚園児*1になってしまった4歳の娘が泣き叫ぶのだ。兄にあたる6歳の息子を知っている幼稚園の先生はそんな娘に対して「下の子だからすぐ慣れると思ったんだけど」と残念そうに言う。

 泣いている子供を見送るのは心が痛む。娘は生まれてからこの4年間、習い事はたくさんしてきたもの、デイケアやプリスクールには行ってない。家族や祖父母から離れ一人で長時間見知らぬ場所へ行ったという経験がないのだ。だから幼稚園という新しい環境にひとり投げ込まれて不安になるのは当然のことだろう。こればかりは上の子供だから下の子供だからといった順序は関係ない。逆に、今まで家の外の社会を知らない子供が真新しい環境に対して何ら不安を覚えず適応できるほうが不思議に思われる。大人の私でさえ今でも新しい職場や新しい学校に行くとなればやはり緊張するものだ。

 だが、デイケアやプリスクールに通った子供たちはさすがにたくましい。すでに1歳前後から、親から離れ、他人が見守るなか新しい環境に適応する術をしっかりと身につけているようだ。そういった子供たちが過半数の幼稚園なだけに新学期だというのに涙を見せる新入生は少数派で、悲しみを隠し切れない娘に対して「入園してもう3日も経っているのに、まだ慣れてないの?!」と驚く先生もいる。

 我が家では入園して「もう3日」じゃなく「まだ3日」なのだ!こればかりは子供のペースで慣れていくしかない。そんなに焦って成長しなくていいんだよ。ゆっくり成長してくれていいんだよ。私は今日もそう声を大にして言いたい。

*1 オンタリオ州の幼稚園はフルタイムの2年制度

 

我が家の幼稚園児、いざ登校中

  


■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。 
ブログ: http://makoogura.blog.fc2.com 

 

 

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