2016年8月25日 第35号

 我が家の子供たちは動物が好きだ。動物をこよなく愛するムツゴロウさんのような夫の影響で、頻繁に農場に行っては、馬や牛、山羊や羊といったありとあらゆる動物に癒されて戻ってくる。私はその逆で動物が苦手だ。潔癖症な父の「動物は汚い」のもと育ってしまったことで、どうしても動物がかわいいとは思えない。触りたいとも思えない。動物特有の匂いも苦手だ。だが、今書いてしまったようなことをうっかり口に出してしまうと、「なんて冷たい人なんだろう」とひかれることが多いので、その事実を知る人は少ない。もちろんなれるものなら夫や子供たちのように動物好きになりたい。

 そんなところ、先日オンタリオ州にあるアッパーカナダビレッジという観光地に行ってきた。ここは1866年のカナダの田舎村を再現した村だ。畑もあり、黒い豚が10匹ほど走り回っていた。夫と子供たちは豚を見るなり「かわいい〜」と近づきに行った。豚のほうも、人間に慣れているようで、犬や猫がするようにさっそく地面に這いつくばっては、腹を触れと指図をする。行き交う観光客たちも次々と立ち止まっては嬉しそうに撫でている。大量のハエに囲まれ自分の糞まで食べてしまっている、この豚たちに「触りたい」「癒されたい」と思うのはどうやら我が子たちだけじゃないようだ。

 「こんなにかわいい豚たちなのに。触れないなんて、ママはかわいそうだね」と子供たちは言う。そして私はこんな自分を残念に思う。こればかりは努力のしようがないのだ。ただ子供たちが動物好きに育ってくれたことを嬉しく思うのみだ。子供たちには私のようになってもらいたくない…夫のそんな強い願いから、我が家には農場年間パスやパンフレットがゴロゴロと転がっている。

 

豚をやさしく撫でる娘。こうやって写真で見たら豚もかわいいんだけどな〜

  


■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。 
ブログ: http://makoogura.blog.fc2.com 

 

 

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