2017年5月18日 第20号

 遅ればせながらバンクーバー近郊でも晴れの日が多く見られるようになってきました。テニスやジョギング、ゴルフなどの運動にはもってこいの季節です。運動といえば、血糖値を低下させると同時に、肥満の解消に大きな効果があります。その反面、病状によっては逆に高血糖や低血糖を引き起こす原因になることもあります。そこで血糖値の測定には欠かせないのが血糖自己測定器です。

 ひと昔前までは、測定器(blood glucose meter)に差し込んだテストストリップ(日本では試験紙やチップ、センサーとも呼ばれる)に血液を吸い込ませると、白黒画面に血糖値が表示されるだけというのが一般的でした。しかし最近では、テクノロジーの進化に伴い、測定器に様々な機能が組み込まれるようになりました。 以下に、代表的な2つのブランドを取り上げて紹介します。

 

① Lifescan 社One Touch シリーズ

比較的新しいのがOneTouch Verio® とOneTouch Verio Flex ™の二つの機種です。OneTouch Verio® はカラー画面に血糖値が表示され、画面そのものも大きめなので、視力が低下して従来のコンパクトな白黒表示が見づらい人にお勧めです。また、血糖値が低すぎる場合には青、正常範囲のときには緑、血糖値が高すぎる場合には赤といったように、色のついたドットを表示することで血糖値の高低を識別しやすくなっています。 OneTouch Verio Flex ™ は、最もベーシックな機能だけを求めている人向きの、白黒画面の測定器です。画面に測定値が表示された際、下に矢印が出て、血糖値が正常範囲内かどうかを教えてくれます。しかしこの機種では、ブルートゥース接続によりスマートフォンに測定記録を転送し、記録を保存できるようになっています。

 

② Bayer 社のContour シリーズ

Bayer 社は、白黒画面のベーシックモデルContour® Next とContour® Next EZ、またUSB 接続機能のついたContour® Next USB が有名です。しかし、最近これらの測定器の進化版として登場したのが、Contour® Next One という機種です。測定器の先端が鮮やかに光り、色により血糖値の高低をお知らせする機能(橙色:上限以上、 緑:正常範囲、赤:下限以下)が備わりました。測定値をブルートゥース接続でスマートフォンに転送すると、詳細なデータ分析を行うことができます。このアプリケーションに食事の写真をとることで、食事の内容、特に炭水化物の摂取量に連動して、血糖値の変動する様子が一目瞭然となります。さらに、血液サンプル量が十分ではなかった場合に、60 秒以内であれば同じテストストリップに血液を足して測定ができるSecond-Chance® 機能は非常にユニークで便利な機能です。(他社の測定器では、サンプル量が少ないとエラー表示となり、一枚のストリップが無駄になります。)

 ブリティッシュコロンビア州の公的薬剤費保険システムでは、フェアファーマケアに登録しても、テストストリップが自動的に公費負担の対象となる訳ではありません。ヘルスユニットや病院に設置される糖尿病教育センター(Diabetes Education Centre)でトレーニングを受け、修了証(certificate)を発行してもらう必要があります。さらに公費負担の対象となるストリップの数には上限があり、これは服用・使用中の糖尿病治療薬の種類によって異なります。

 ここでは2つのブランドだけを紹介しましたが、測定 器はこれ以外にも、いくつもの種類があります。血糖自 己測定器とその操作方法、またテストストリップの保険 負担等について不明な点や疑問が生じた場合には、是 非かかりつけの薬剤師にご相談ください。

 

【リンク】
OneTouch シリーズ https://www.onetouch.ca/meter-comparison-grid
Contour® Next One https://www.contournextone.ascensiadiabetes.ca/

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

読者の皆様へ

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