2018年6月28日 第26号

 「介護離職」とは、文字通り、親などの家族の介護のために、やむを得ず仕事を辞めることをいいます。日本では、「育児・介護休業法」により、労働者には一定期間、家族の介護のための休業・休暇、介護による時短措置が認められていますが、これらの制度が適切に運用されているとは言い難いのが現状です。少子高齢化に伴い、労働者一人当たりの介護負担はますます増え、介護の長期化や、介護を必要とする家族が遠隔地に住んでいる場合など、 離職を選択する労働者はさらに増えることが予想されています。総務省の「就職構造基本調査(2012年)によると、過去1年以内に介護・看護のために前職を離職した人は約10万人に上ります。

 先日、日本の大阪府北部で起きた地震をきっかけに、数十年来の友人といつもより頻繁にSNSで連絡を取っています。その友人は、家族の介護の真っ只中。どうしても都市部に集中しがちな職業を専門にしているため、介護をしながら週5日、家から遠い職場に勤務することに限界を感じ、介護を理由に離職した10万人のひとりです。介護の先行きが見えないため、働きたいけど働けない状況にあります。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート(平成24年度厚生労働省委託調査)」によると、40代から50代の就労者の4割が、5年以内に介護に直面する可能性があることが明らかになっています。しかし、介護は突然始まることが多く、対処していくために何から手を付ければいいのかわからないのがほとんどのケースでしょう。いざというときに備え、実際に介護が始まる前から、各市町村に設置されている「地域包括支援センター」(地域住民の介護予防や暮らしのサポートをする行政機関)をはじめ、介護支援団体や介護経験者など、相談できる窓口(人)を知っておくことが重要です。介護についての知識が不足していることが情報収集を難しくしている場合もあるため、日本の行政制度やサービスについて知っておく必要があります。

 「介護保険制度」の仕組みや、仕事を辞めずに介護と仕事を両立するための仕組みがだいたい理解できていれば、突然始まった介護の将来を考え、途方に暮れることもないはずです。親が居住する自治体のウェブサイトから、「介護保険」をキーワードに検索すると、ダウンロードできるパンフレットがある地域もあります。介護保険・介護サービスの概要を知った上で、インターネットや書籍を活用して情報収集しておくと、相談窓口に行く時に相談の内容を整理することにも役立つでしょう。また、自分が置かれている状況を正しく理解し、不安なこと、困っていることを把握することも大切です。これらのことを明確にした上で、介護支援団体やケアマネージャー、介護経験者などに相談できると、利用できるサービスの活用、介護用の製品・器具類の利用を含め、可能な選択肢に対応した具体的な解決策が見つけやすくなります。

 介護に直面したときに、「とりあえず会社を辞めて落ち着いて考えよう」という選択肢を選ぶ前に、職場の上司に相談してみることが、仕事と介護の両立への早道になることもあります。介護をしていることを職場で話さないと、その負担の重さから心身とも疲れてしまう可能性があります。また、特に介護が始まったばかりの時期は、いろいろなところからかかってくる電話に対応をしていると、勤務態度が悪いと評価されかねません。両立が難しい職場もあることは事実ですが、上司の理解や協力が得られれば、職場で利用できる支援制度も利用し、介護と仕事を両立できる介護環境を整えて、「介護離職」という選択肢を選ばない働き方ができるはずです。

 介護者は、要介護者を中心に介護を考えてしまいがちです。しかし、介護者の心身が健康でなければ、守りたい人を守れません。自分の生活を中心に考え、その上で介護と向き合うという選択肢もあるのです。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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