2018年3月1日 第9号

 先日、あるイベントに参加し、分科会の発表者として、他の参加者の皆さんとお話しする機会がありました。その中で、私が公的、私的に行っている認知症関連の活動をご存知の参加者の方が、ポロっと一言。 「こういう活動をしているあなたが認知症になったら、笑い話にもならないなあ…。」

 私の母は、アルツハイマー型認知症と診断され、当初は、週6日デイサービスに通いながら自宅で生活していました。しかし、いろいろな理由で入退院を繰り返し、その都度、認知症の症状がぐっと進みました。最後に入院した病院で、食事の代わりに経静脈栄養になり、体重は元気な頃の半分以下。痩せて骨と皮の状態になりました。こちらの話す内容は理解できていたようですが、言葉での意思疎通はできなくなり、体は拘縮し、起きて歩くこともままならなくなりました。他の病気を併発したこともあり、寝たきりのまま、病院で息を引き取りました。同居する家族に最も発言権があるという理由から、治療方針、特に延命措置について、家族とは意見が合わないまま、言葉をのまざるを得ないという経験もしました。最後に母の病室を後にした時のイメージと感情は、忘れたくても忘れられません。

 母が認知症と診断されたのは、80歳近くなってからですから、一部、遺伝が疑われる、家族性の若年性アルツハイマー型認知症ではありません。しかし、私自身が認知症という診断を受ける確率は、 認知症の家族がいない人よりも高いのか、という疑問は残ります。発症の原因が遺伝子とは関係ないにしても、私の遺伝子の半分は、母から受け継いだものなのです。しかし、「糖尿病家系」とか、「癌家系」というような家族の病歴があり、それが遺伝性のものであっても、家族全員が同じ病気になるとは限らないように、認知症と診断された人の家族が必ず認知症になるわけではありません。

 認知症は、加齢により発症の確率は確実に高くなります。年をとれば、誰でもなりえますが、誰がなるかはわかりません。私も、途中、大きな病気や事故で死ぬことがなければ、平均寿命まであと30年はあります。しかし、先のことを心配しすぎても埒があきません。どうなるかわからない先のことを心配するより、生き甲斐をもって長い人生を楽しく過ごすにはどうすればよいかを考えたほうが、よっぽど意義があります。しかし、もし自分が認知症になったら、と考えたことはありますし、いくつか決めていることもあります。もし、私が認知症と診断されたら、①認知症の当事者の立場から、認知症の正しい理解を促す活動を続けること、②症状の進行をビデオで記録してもらうこと、そして、③書けなくなるまで日記やブログを書くことを決めています。

 普通、認知症の症状に最初に気付くのは本人です。周囲の人にはわからないレベルなので、症状を隠したり誤魔化したりするのはそれほど難しくありません。認知症に対する誤解や偏見を恐れて、誰にも話せないという状況も考えられます。この時期は、認知症予備軍といわれている、MCI(Mild Cognitive Impairment、軽度認知障害)にあたり、早期発見が可能な時期です。場合によっては、認知症への移行を防ぐことも可能です。ただし、早期発見ができても、その後何もしなければ、認知症への移行率は1年後で10%、5年後で40%(「認知症ねっと」より)とされています。また、この時期を逃すと、進行を遅らせる薬も効きにくくなります。

 認知症の診断が下ったからといって、そこで人生が終わるわけでも、住み慣れた地域社会を離れなくてはならないわけでもありません。診断後も続く人生をサポートするために、認知症の人が安心して暮らせる地域作りが、私たちに今できることだと考えます。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

今週の主な紙面
12月6日号 第49号

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